調味料の副生物で畑や樹木を元気に─味の素 農業への展開

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味の素(株)アミノサイエンス事 業開発部アミノ酸環境食資源グ ループの田中優・専任部長

味の素㈱では、発酵法によるアミノ酸の製造時にできる副生物を使って、液体肥料や葉面散布剤などを製品化している。農産物の収量増加を目的としているが、最近の研究では病害抵抗性を高める効果が確認され、更なる農業への貢献を目指している。

「アミノ酸を使って途上国や農業に貢献できるビジネスをつくりたい」

そう思いを語るのは、味の素㈱アミノサイエンス事業開発部アミノ酸環境食資源グループの田中優・専任部長だ。アミノ酸発酵の技術者として、ベトナム、ブラジルなど各国のアミノ酸製造工場に赴任してきた。ベトナムでは工場長を務めた経験を持つ。

味の素は、世界8カ国17カ所にアミノ酸や核酸の工場を持つが、その地域で確保しやすいサトウキビやキャッサバ、トウモロコシなどアミノ酸発酵原料の生産地域に位置している。田中専任部長は、各地の農家と一緒に仕事をしてきた経験から、農業に貢献したいという思いが高まってきた。

◆副生物で健全な畑を

同社主力製品であるうま味調味料「味の素」をはじめとしたアミノ酸は、様々な植物由来の糖を発酵させることでつくられる。製造過程では、窒素、リン、カリウムや、有機酸、アミノ酸などを含んだ栄養豊富な「発酵副生液」が残る。

アミノ酸の生産地では、原料となる農作物が健全に育つこと、原料を持続的に調達できることが重要な要素だ。そこで同社は、この発酵副生液を有機質の肥料や飼料として地域に還元する「バイオサイクル」の仕組みづくりに30年以上前から取り組んできた。

例えば、50万㌶の畑からサトウキビ3800万㌧が収穫できる。そのサトウキビから粗糖420万㌧を抽出すると、糖蜜150万㌧が残る。これを使って「味の素」を50万㌧製造でき、副生物が160万㌧発生する。その副生物は、有機質肥料160万㌧に生まれ変わり、サトウキビ畑35万㌶に必要な窒素(肥料)をカバーできる。

ただ、「副生液」を有機肥料の商品として売るだけではなく、収量を上げるために必ず現地でテクニカルサービスを付けている。大量に散布すれば、土壌がミネラルを含み過ぎてしまい、塩害の危険性さえある。適切な使用量、使用頻度を伝えることで収量を確実に増やすのだ。

味の素㈱はなぜこうした副生物ビジネスに取り組んできたのか。実は、発酵法でアミノ酸を製造し始めた1960年代から、栄養豊富な副生物を何かに生かせないかと模索してきた経緯がある。

同社は、2005年にゼロエミッション計画をスタートさせ、廃棄物・排水・CO2とフロン類のゼロエミッションに取り組んできた。副生物の再資源化率も100%を達成している。さらに、発酵副生液の付加価値化の開発も続けてきていたが研究開発から販売まで一貫して取り組むために、2009年に「A-Link(A リンク)」プロジェクトが立ち上がった。

世界各地のアミノ酸工場で進めてきた副生物の農産物への利用方法や研究データなどを集積し、副生物ビジネスを強化するのが目的だ。科学的実験データに基づき、用途開発を進めた。

◆生育早く、収量も増加

「アミハート®」を使用したレタス。定植直後と定植2週間後に200倍希釈液を使用。窒素量は同量だが、生育が早くなった

「アミハート®」を使用していないレタス

 

 

 

 

 

 

葉面から効果的に栄養成分などを吸収できる葉面散布剤「アジフォル®」は、アミノ酸副生物の代表格だ。1980年代にブラジルで開発され、大豆やコーン、果樹、綿花畑などで利用されている。2007年より、ペルー、タイ、インドネシア、ベトナム、米国でも販売を始めた。

土壌施肥の場合、土壌微生物、土壌固定、流亡などで肥料ロスが大量に出る。だが、葉面散布であれば葉面から直接栄養分を吸収するため、少量で効率良く吸収できる。

「アジフォル®」は、農薬と一緒に散布することもあり、散布量は1㌶あたり数㍑と少量で済む。また、最近の研究では植物の病害抵抗性を高め、病原菌の感染を抑制する効果が確認されている。

これにより農薬の散布量の削減の可能性が見込める。農薬の使用回数を制限されている地域・作物では、農薬の散布回数を調整し、病害発生時に農薬を使用することもできる。現地農家からは、「以前と比べて作物が元気に育ち、収量が増加した」という声も届く。

2011年6月には、日本でも副生物を利用した液体肥料「アミハート®」の販売が開始した。九州事業所の副生物から生まれた「アミハート®」は、カツオ節のうま味成分である核酸(イノシン)の発酵生産で発生する核酸リッチな発酵副生液が原料だ。

北海道大学との共同研究や神奈川県の農家の協力で行われた栽培実験では、トマト、レタス、メロンなど植物の根張りが促進され、生育期間も短縮された。収量も増加したという。埼玉県の農家では、イチゴに「アミハート®」を5㍑/10㌃で1週間に1回使用したところ、樹勢が良くなり、果実の糖度が増加した。

田中専任部長は、「食に関わる企業として、食や健康に貢献すべきだと考えている。さらにそこから、『農業資源』への貢献を進めていきたい」と語る。

2012年8月17日(金)11:37

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