アサヒ、「価値関連図」で社会インパクトを可視化へ

記事のポイント


  1. アサヒは「インパクト」の可視化に向け、価値関連図を作成した
  2. 非財務と財務領域の相関性を独自のロジックを組み検証する
  3. 2025年までにサステナビリティと経営の本格的な統合を目指す

アサヒグループホールディングスはサステナビリティ活動による事業インパクトと社会インパクトの可視化に向けて、「価値関連図」を作成した。サステナビリティの取り組みが財務価値にどのように影響を与えているか独自のロジックを組み検証を行う。2025年までにサステナビリティと経営の本格的な統合を目指す。(オルタナS編集長=池田 真隆)

「自然資源を享受して事業活動を行っているので、事業を持続化するには、社会インパクトを出さなければいけない」。アサヒグループホールディングスの勝木敦志・CEOは2023年12月に登壇したビジネスセミナーでこう強調した。

同社が社会インパクトを出すために行った施策が「価値関連図」の作成だ。価値関連図とは、非財務の取り組みが財務価値に及ぼす影響を図式化したものだ。図式化することで社員のサステナビリティ意識の向上を図った。

アサヒグループホールディングスが作成した「価値関連図」の一部

統合報告書では、事業が生み出す価値を投資家に伝えるため、「オクトパスモデル」と呼ばれる図を参考に各社は価値創造の流れを図式化する。だが、価値関連図は価値創造モデルとは違う。価値創造が投資家向けに対して、価値関連図は「社内推進」が目的だ。

サステナX

同社は統合報告書に価値関連図を掲載したが、その情報は一部だ。実際の価値関連図はエクセルで作成し、公開した情報の数十倍に及ぶ。

価値関連図を担当した、同社の勝島宏信・サステナビリティ部門シニアマネージャーは、「何のために事業を行うのか社内で共有するために作った。ダブル・マテリアリティの考え方に基づき、事業を推進するため、価値関連図は有用だ」と話す。

価値関連図を作成するにあたり、同社は仮説を立てた。同社が定めた5つのマテリアリティ(重要課題)が、財務価値にどのような影響を与えているか考えた。

例えば、同社のマテリアリティの一つである「環境」領域に対応した取り組みに「ラベルレス商品」がある。CO2排出量の削減だけでなく、売上高や利益など財務価値にどうつながっているかロジックを組んだ。

ラベルレスにすることで、社外とのコミュニケーションが生まれる。顧客満足度が上がり、製品ブランドの価値が上がる。その結果、売上高も上がるというロジックだ。

現在や将来のリスクも考慮した上で収益効果を見える化し、企業価値向上につながるレピュテーション効果を検証する取り組みだ。

今後は、価値関連図を作る際に立てた仮説を検証し、環境領域での事業インパクトや社会インパクトの可視化に取り組む。2025年までにサステナビリティと経営の実質的な統合を目指す。

M.Ikeda

池田 真隆 (オルタナ輪番編集長)

株式会社オルタナ取締役、オルタナ輪番編集長 1989年東京都生まれ。立教大学文学部卒業。 環境省「中小企業の環境経営のあり方検討会」委員、農林水産省「2027年国際園芸博覧会政府出展検討会」委員、「エコアクション21」オブザイヤー審査員、社会福祉HERO’S TOKYO 最終審査員、Jリーグ「シャレン!」審査委員など。

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キーワード: #サステナビリティ

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