地震から命とくらしを守るために――一般家庭に制震技術を届けたい

前回は、私たちが地震から、家とくらし、そして命を守るために、耐震・免震・制震という三つのメニューがあることをお伝えした。第二回は、その中でも一般家庭が比較的取り入れやすいという点で、「制震システム」にスポットを当てたいと思う。実はこの制震システムという技術、つい最近発明されたわけではない。ではなぜこのシステムがあまり世の中に広まっていないのか。そこには高いコストと施工の難しさ、そして効果の信頼性が乏しいという背景があった。(オルタナ関西支局=赤司研介)

しかし、「人々の命を地震から守りたい」という強い思いから、この問題全てをクリアし、一般家庭に確かな制震システムを届けようという企業がある。兵庫県神戸市に本社を置く、住友ゴム工業株式会社だ。車好きの方であればよくご存知かもしれないが、売上げの8割以上をタイヤ事業が占める企業である。「タイヤを作る会社がなぜ地震対策を」と思う方も多いかもしれない。そこには、タイヤ事業で培った日本随一の「ゴムを扱う技術」と、阪神・淡路、東日本という二度の大震災の被災経験を持つ企業としての使命感があった。

住友ゴム工業が提供するのは、MIRAIE[ミライエ]という名前の「制震ダンパー」だ。開発のリーダーである松本さんはMIRAIEの特長を次のように話す。

制震事業推進部ビジネスチームリーダーで、工学博士の松本達治さん

「MIRAIEを木造住宅に設置することで、地震による揺れ幅を、MIRAIEがない場合に比べて最大70%※1低減できます。特に、繰り返し効果を発揮するシステムで、5回連続で大きな地震が起きても建物が倒壊しないという実験結果がでました。また、一般家庭に流通しやすいよう、ハウスビルダー様への直接販売を行うことで、従来の物に比べて安価で最終のお客様へ提供できるようにと考えました」

※1 振動台実験の結果によるものであり、建物形状、配置プラン、地震波によって異なる。

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オルタナ編集部

サステナブル・ビジネス・マガジン「オルタナ」は2007年創刊。重点取材分野は、環境/CSR/サステナビリティ自然エネルギー/第一次産業/ソーシャルイノベーション/エシカル消費などです。サステナ経営検定やサステナビリティ部員塾も主宰しています。

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