オルタナは10月15日、サステナ経営塾21期下期第1回を開いた。第4講には、気候変動イニシアティブ(JCI)の加藤茂夫共同代表が登壇し、「脱炭素と企業戦略」と題して講義した。環境経営の元祖リコーでサステナ担当役員を務めた加藤共同代表は、「気候対策を怠れば、GDPの10%相当(60〜70兆円)の経済損失が生じ、1人当たり年収も60万円減少する可能性もある」と指摘した。講義レポートの全文は下記の通り。(オルタナ輪番編集長=池田真隆)

・気候変動はもはや「変動」や「温暖化」という段階を超え、「地球沸騰化」「気候危機」と呼ぶべき緊急事態にある。世界の平均気温は上昇を続け、台風・洪水・山火事などの異常気象が頻発し、命・健康・経済すべてに深刻な影響を与えている。日本でも海面上昇による甚大な資産損失や居住地喪失のリスクが高まっている。
・国連やIPCCの科学的報告によれば、これらの原因は明確に人間活動にある。石炭・石油など化石燃料の燃焼、農業、輸送などあらゆる経済活動が温室効果ガスを排出している。科学者は、産業革命前比1.5℃以内の気温上昇に抑えるため、2050年までに排出量を実質ゼロ(ネットゼロ)にする必要があると警告する。実現は不可能ではなく、既存技術だけでも達成可能だと国際エネルギー機関(IEA)は示している。
・世界ではパリ協定以降、再生可能エネルギー(再エネ)の導入が急拡大しており、新規発電容量の90%以上を占めるまでに成長した。再エネコストは大幅に下がり、クリーンエネルギー産業は世界で22兆ドル規模・3000万人以上の雇用を生み、経済成長の原動力となっている。
■日本は化石燃料の輸入に毎年30兆円を費やす
■再エネ導入の4原則、「持続的で追加的」など
■「気候変動対策を怠ることは人権侵害」: 国際司法裁判所

