記事のポイント
- CDPのマデーラCEOは「アースポジティブ」な意思決定が成長力になると指摘
- アースポジティブとは、事業成長と環境の保護・回復を両立する考え
- マデーラCEOはサステナ分野のオピニオンリーダーの一人として知られる
企業の環境対応などを評価する英国の非営利組織CDPのシュリー・マデーラCEOがこのほど来日し、「アースポジティブ」な意思決定が企業の成長力になると指摘した。アースポジティブとは、事業成長と環境の保護・回復を両立する考え方で、マデーラCEOは、サステナ情報開示に取り組むことが第一歩だと語った。マデーラCEOはサステナ分野のオピニオンリーダーの一人として知られる。(オルタナ輪番編集長=池田真隆)

CDPのマデーラCEOは11月7日、都内で開かれた「気候変動アクション日本サミット2025(主催:気候変動イニシアティブ)」に登壇した。マデーラCEOは、「資金調達機会の増加」などサステナ情報開示に取り組むことの意義は3つあるとし、自然を「外部性」ではなく「企業の資本」として貸借対照表に反映すべきと語った。
■CDPを通じて情報開示、プライム企業の7割に
マデーラCEOは講演の冒頭で、「環境リスクは経済リスクと同義語になった」と強調した。企業が持続可能な成長を実現するには、環境への配慮を、経営戦略の中核に据える必要があると訴えた。
CDPの調査では日本企業の82%が、「環境リスクは財務価値にも影響を及ぼす」と回答した。世界平均(62%)を大きく上回り、日本の多くの経営者がサステナビリティを事業拡大のカギと認識していることを説明した。
2024年には、国内で2200社以上がCDPを通じて環境情報を開示した。プライム市場に上場する企業のうち、開示した企業の割合は約7割に及ぶ。
■サステナ情報開示がビジネス効率を高める
マデーラCEOは、サステナ情報開示に取り組む意義は三つあると述べた。第一の意義は「資本へのアクセス拡大」だ。サステナ情報を開示する企業は、投資家からの信頼を得やすい。
二つ目は「ビジネス効率の向上」だ。顧客や取引先から、透明性の高い企業は選ばれやすい。最後は「法令順守」だ。各国で開示義務化が進む中、早期対応は競争優位にもつながる。
CDPは気候変動だけでなく、水や森林など自然資本全体の情報開示を推進する。「自然と気候はトレードオフではない。環境と経済の強さを結びつけるものだ」とマデーラCEOは語った。
AI活用やデータセンターのエネルギー消費などを考慮すると、自然との依存関係を意識しなければ成長は持続しないとし、これからは、自然を「外部性」ではなく「企業の資本」として貸借対照表に反映させるべきだと話した。
年末のCOP30は「アクションのCOP」になると予測した。資金と実行力を結びつけ、ネットゼロの先にある「アースポジティブ」な経済への移行を図る気運を高める機会にすべきだと強調。「自然と共に成長する経済への転換が求められている。情報開示は、その第一歩であり、企業が未来を切り拓くための成長戦略だ」と話した。



