記事のポイント
- 環境NGOが消費財企業の「森林&人権方針ランキング2025」を発表した
- ユニリーバが5年連続で首位、花王と日清食品は前年よりも評価を上げた
- 森林破壊と人権侵害をなくすには、コミットだけでなく行動が求められる
環境NGOのレインフォレスト・アクション・ネットワーク(RAN)はこのほど、大手消費財企業10社を対象とした「森林&人権方針ランキング2025」を発表した。調査開始から5年連続でユニリーバが首位を獲得し、最下位はモンデリーズだった。花王と日清食品はサプライチェーン上の暴力行為を認めない公約などで、前年よりも評価を上げた。しかし依然として取り組みの進捗は遅く、よりスピード感をもってコミットメントを行動に移すことが求められる。(オルタナ副編集長=長濱慎)

◾️5年連続でユニリーバが最高得点
「森林&人権方針ランキング」は、RAN(本部: 米サンフランシスコ)がグローバル消費財企業10社の森林破壊や人権侵害に対する取り組みを分析・スコア表示する。評価はNDPE方針、人権保護、サプライチェーンの透明性など12項目24点満点で行う。
結果は下表の通りで、2021年の調査開始から5年連続でユニリーバが首位(16点)を獲得。最下位は「オレオ」クッキーで知られる米モンデリーズ(4点)だった。国内企業では花王が10点(24年は8点)、日清食品が6点(24年は5点)で前年よりも評価を上げた。


◾️NDPE方針の適用範囲が評価を分ける
評価の一つの柱となるNDPE方針はP&Gを除く9社が掲げるものの、その適用範囲が適切と認められたのはユニリーバ、コルゲート・パーモリーブ、花王の3社のみだった。
NDPE(No Deforestation、No Peat、No Exploitation)方針とは、森林リスク産品(※)に関する国際基準で、環境NGOや投資家の後押しによって2013年から採用された。消費財企業は3つの中核要素「森林破壊ゼロ、泥炭地破壊ゼロ、搾取ゼロ」に関する方針の策定・公表が求められる。
特に留意すべき点が、産品全般・企業グループ全体への適用だ。例えば、パーム油を1社のサプライヤーから調達する場合でも、NDPE方針を紙パルプや木材といった他の産品全般・サプライヤーが属する企業グループ全体に適用しなければならない。
サプライヤーが商社などのコングロマリット(複合企業体)の場合、直接取引する部門に問題がなくてもグループ内他部門が方針に違反し、間接的に森林破壊や人権侵害に加担するケースがあるからだ。こうしたリスクを避けるためにも、適用範囲の設定は重要だ。
※森林リスク産品: パーム油、紙パルプ、木材、大豆、牛肉、カカオ、木材など、森林破壊のリスクがある産品
◾️花王の方針は国内他社の見本となる
RAN日本の川上豊幸シニア・アドバイザーは、こう話す。
「これまで企業は、RSPO(持続可能なパーム油)認証の取得など個別の『モノ』にフォーカスしてきたが、もっと取り組みの範囲を広げなければ根本的な解決につながらない。そうした状況のなか、花王はNDPE方針の遵守徹底を供給業者と企業グループ全体に求めており、国内他社の見本となる」
一方の日清食品は「サプライヤー行動規範」でNDPE方針の支持を表明するにとどまり、中核要素の明記や供給業社への義務化を求めるまでには至らなかった。
川上氏は続ける。
「ユニリーバやネスレはサプライチェーンの専門家を招くなど、進んだ取り組みを行なっている。ランキングを始めて5年の間に、国内企業の意識も確実に高まっている。しかし全体的に進捗は遅く、森林破壊と人権侵害をなくすという約束を果たせていない。企業は『やる』とコミットするだけでなく、スピード感を持って具体的な行動に移してほしい」
◾️サプライチェーン上の暴力根絶も
◾️先住民の権利保護も重要課題に
◾️森林破壊は「ビジネスと人権」に関係

