「無痛文明」の雲行き(田口ランディ)

■雑誌オルタナ83号:エゴからエコへ(83)

キタシロサイの最後のオスであるスーダンが死んだのは2018年の3月のことだ。

残された娘のナジンと孫のファトゥは北アフリカに生息する最後のメスとなった。オスのスーダンが亡き今、親子が死ぬとき地上からキタシロサイは消えるという。

キタシロサイは野生動物のなかではとりわけ大人しい性質で人間にもよくなつく。1960年代から、サイの角が目的の密猟者が増加した。ケラチンでできた角は、古来から漢方として珍重され、ブラックマーケットでは金より高価とされたらしい。角を奪うために人は黙々と個体を殺した。巨体にも似合わず性格の穏やかなキタシロサイは、人の金欲の前に無力だった。

シロサイは見ていると心がなごむ。大きくてゆったりとしていて、いつも仲良しの鳥さんと共生している。アフリカなんて行ったこともないのに、なんでシロサイのことが気になるのかな。

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田口 ランディ(作家)

作家 東京生まれ。 近刊は地下鉄サリン事件実行犯で昨年に死刑執行された林泰男との14年間の文通・交流をもとに描いた私小説「逆さに吊るされた男」(河出書房新社)

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