2026冬季五輪開催地イタリア、5年で250を超えるスキー場が閉鎖

記事のポイント


  1. 地球温暖化の影響で、冬季五輪開催地のイタリアは5年で265のスキー場が閉鎖した
  2. 米研究によると、開催地コルティナは70年前から2月の気温が3.6℃上昇した
  3. アスリートらは、化石燃料企業との五輪スポンサー契約の打ち切りを訴える

ミラノ・コルティナ2026冬季五輪が2月に始まる。しかし開催地イタリアでは、地球温暖化の影響で、過去5年で265のスキー場が閉鎖するなど、雪不足が深刻だ。米研究によると、開催地コルティナでは、同地が初めて冬季五輪の開催地となった70年前から2月の気温が3.6℃上昇している。科学者やアスリートらは、温暖化の主要因である化石燃料企業との五輪スポンサー契約の打ち切りを訴えている。(オルタナ輪番編集長=北村佳代子)

冬季五輪の開催地・イタリアでは温暖化で
過去5年で265のスキー場が閉鎖した

■アルプスでも人工雪に頼らざるを得ない

米クライメート・セントラルが21日に公表した報告書「温暖化が進む世界での冬季五輪」は、化石燃料の燃焼が引き起こした気候変動が、冬のスポーツ競技に必要な条件を変容させていることを明らかにした。報告書は、気候変動が、屋外での冬季五輪の安全性や公平性、そして長期的な存続の可能性に影響を与えていると警鐘を鳴らす。

2026年冬季五輪を開催する北イタリアのコルティナが、初めて冬季五輪の開催したのは1956年に遡る。70年前の当時と比べると、地球温暖化により、2月の気温は3.6℃上昇した。気温が氷点下となる年間日数は当時から41日減少した。

「コルティナ周辺のドロミテ(南東アルプス地域)では、気温上昇で雪線が上がり、降雪が雨に置き換わる『雨化』や、融雪の前倒しにより、低標高ほど積雪期間が縮む傾向がある。アルプスの雪被覆の持続は、10年で5%程度のペースで減少しているとされ、100年で新雪量が30%前後減ったとの分析もある」と、一般社団法人日本地域地理研究所の瀧波一誠代表理事はコメントする。

報告書によると、コルティナの2月の平均積雪深は、1971年から2019年にかけて約15センチメートル減った。そのため、2026年の冬季五輪大会では、標高の高いイタリアのアルプスで開催されるにもかかわらず、約240万㎥の人工雪が必要となっている。人口雪の製造には、94.8万㎥もの水が必要となる。

「この地域は石灰岩の山々と深い谷が大きな標高差を生み、地形的に冬季五輪競技に適する一方、経済的には観光、特にスキーに強く依存している。そのため、造雪量の増加による水資源や電力使用量の増大と、脆弱な高山生態系に対する悪影響などの問題が深刻化している」(瀧波代表理事)

■冬季五輪の開催候補都市も減少の見込み

イタリアでは、温暖化によって、過去5年間でスキー場の閉鎖が265件に上った。欧州では、スイスで55のスキーリフトとケーブルカーが廃止となったほか、2030年冬季五輪開催予定地のフランスでは、すでに180以上のアルプススキーリゾートが閉鎖している。

クライメート・セントラルの報告書は、イタリアに限らず、過去19回の冬季五輪開催都市の2月平均気温を分析した。それによると、1950年から2021年で、平均気温は2.7℃上昇した。

同報告書が言及した2024年の調査では、93の冬季五輪の開催候補都市のうち、気温変動による気温上昇で、2050年代に冬季五輪を開催できる条件が整う都市は52都市に減るという。

通常3月に開催される冬季パラリンピックに関しては、さらに見通しは厳しく、2050年代に開催可能な条件が整う都市は、93都市中、わずか22都市となるという。

■冬季五輪による排出量は、スポンサー契約により2.5倍に

「地球温暖化がウィンタースポーツに与える影響について、科学的な証拠が山ほどあることは言うまでもない。積雪が減り、氷河が溶けていることは、実際に山を訪れる人の誰の目にも明らかだ」と話すのは、科学者らで構成するサイエンティスツ・フォー・グローバル・リスポンシビリティ(SGR)でディレクターを務めるスチュワート・パーキンソン氏だ。

SGRは英シンクタンクのニュー・ウェザー・インスティテュートとともに1月18日、「オリンピックは燃やされた」と題する報告書を公開した。報告書は、冬季五輪の温室効果ガス(GHG)排出量の検証を目的としたものだが、雪の減少を生み出している化石燃料企業が、冬季五輪のスポンサー企業となっていることの矛盾にも着目する。

今回のミラノ・コルティナ冬季五輪に関しては、イタリアの石油・ガス大手のENI社、自動車メーカーのステランティス社、伊国営航空会社のITAエアウェイズ社といった、排出量の多い3社とスポンサー契約を結んでいることを問題視する。

報告書では、ミラノ・コルティナ冬季五輪の公式データをもとに、大会の運営によって約93万トン(CO2換算)のGHGが排出されると推定する。そのうちの半分弱(約41万トン)は観客の移動に伴う排出だ。

それとは別に、これら3社のスポンサー契約によって推進される高炭素な商品・サービスの販売が増えることで、GHGが約130万トン追加排出されると試算する。化石燃料企業とのスポンサー契約が、冬季五輪に伴う排出量を約2.5倍に増大していると警告する。

報告書は、大会運営とスポンサー契約に伴うGHG排出によって失われる雪被覆面積は約5.5㎢と推計しており、これはオリンピック規格のアイスホッケーリンク3000面超に相当するという。

アスリートらも化石燃料企業との契約終了訴える

報告書は、冬季五輪でのGHG排出削減に最も効果的な対策の筆頭に、高排出企業とのスポンサー契約の終了を挙げる。また、競技場やその他インフラなどの新規建設の回避や、航空機で移動する観客数の大幅な削減も効果が大きいと提案する。

実際、1988年に開催したカルガリー冬季五輪は、タバコ企業とのスポンサー契約を打ち切った。それがその後の各種スポーツイベントで、タバコ関連企業とのスポンサー契約を見直す流れをつくりだした。

スウェーデンのクロスカントリースキー選手のビョルン・サンドストローム氏は、「オリンピックは常に排出ガスを発生させるもので、排出削減は最優先課題でなければならない。しかし、大会が最も大きな影響を与えるのは、世界に発信するメッセージだ」と話す。

「そのシグナルが、化石燃料企業のスポンサーシップによって推進される場合、それは気候科学に直接反し、ウィンタースポーツの未来を脅かす」(サンドストローム選手)

グリーンランドのバイアスロン選手ウカレウ・スレッターマーク氏は、「冬のスポーツが、化石燃料企業に、社会貢献しているかのようにPRできる場を提供していることは正当化できない」と海外メディアにコメントした。

「化石燃料産業は、気候変動の最大の要因であり、冬季スポーツそのものの存続を脅かしているのが事実だ。(化石燃料企業とのスポンサー契約は)完全に矛盾している」(スレッターマーク選手)

■気候変動はスポーツ産業の収益の2割を脅かす

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北村(宮子)佳代子(オルタナ輪番編集長)

北村(宮子)佳代子(オルタナ輪番編集長)

オルタナ輪番編集長。アヴニール・ワークス株式会社代表取締役。伊藤忠商事、IIJ、ソニー、ソニーフィナンシャルで、主としてIR・広報を経験後、独立。上場企業のアニュアルレポートや統合報告書などで数多くのトップインタビューを執筆。英国CMI認定サステナビリティ(CSR)プラクティショナー。2023年からオルタナ編集部、2024年1月からオルタナ副編集長。

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