■エコホテル巡礼(特別篇)
世界的なコロナ感染症の渦が未だに止まらない。多くの分野で経済は停滞し、長いトンネルに出口が見えてこない現状が続く。しかし、それでもワクチンや経口薬などという、感染症対策に一筋の光が見えてきた今、私たちは何としても旅行業、宿泊業、飲食業、運輸業など、旅に直接関する業界に、未来を見つめる明るい話題はないかと模索中である。
そんな中、2021年11月19日、観光強化策の一環でもあるイベント「世界夜景サミット」が長崎で開催された。「夜景観光」に焦点を当て、官民の関係者が集ったこのイベントに、筆者は幸運にも、モナコ政府観光会議局を通してオフィシャルに取材許可を得た。
主催は一般社団法人夜景観光コンベンション・ビューロー(丸々もとお代表理事)で、参加国は世界10カ国の国や地域から約150人が集結。世界的なコロナ禍において、出席できない国の代表は、在日政府観光局の代表や大使館関係者らが出席。それぞれの都市の取り組みやコンセプト、今後の目標などを発表し、地域振興や観光客誘致への取り組みが発表された。
発表によると、これまでの日本三大夜景の基準であった「港町の夜景であること」を踏襲しながらも、急速に変わる時代に合わせ、今回は「魅力ある夜景が楽しめること」「夜景観光への取り組み」を評価するなど新たな基準を設定し、世界の夜景を対象とした(但し、これまでの日本三大夜景や世界三大夜景は、いつ生まれた選定基準か、どの団体が決めたのか、またどのように選ばれたかなどは想像の範疇を超えない)。
夜景資源を活かし観光業界を活性化
2011年12月、一般社団法人「夜景観光コンベンション・ビューロー」の前身である「日本夜景遺産事務局」内に「世界新三大夜景認定委員会」が設置され、2012年5月 全国6100人の夜景観光士(夜景検定資格保有者)推薦により、120カ所の地域の第一次ノミネートに始まり今日に至っている。
19日に選ばれたのは、12年前に創設された「世界新三大夜景」である。この評価は10年をめどに再選定される。基準は、様々な場所から美しく鑑賞できること、鑑賞できる場所へのアクセスの良さ、関係機関が夜景観光への取り組みに携わっていることなど11項目が審査される。
今回は、1位にモナコ、2位が長崎、3位には上海が選ばれた。イベントの最後には、代表者全員で「夜景資源を活かし、観光業界の活性化、振興を目指す」との共同宣言を発表し、閉幕となった。
モナコ、ラグジュアリーとサステナビリティを融合
長崎で開かれた「世界夜景サミット」では、選定基準を達したばかりか美しさも含まれ、モナコが1位に選出された。偶然にも、この19日はモナコの建国記念日であり、本国では祝儀が行われていたに違いない。
そのモナコを代表し、在日モナコ政府観光会議局の代表、ディレクターのシルベスタ典子氏および同会議局のセールスマネージャー・横山恭子氏は喜びを語った。
モナコといえば、カジノや豪華なホテル、セレブの集うパーティー、F1レースなど、裕福なセレブが暮らし楽しむ国という、ラグジュアリーの極みのような印象がある。
しかし、その印象とは別に、2015年9月に国連で採択されたSDGs(持続可能な開発目標)に大きく反応したモナコは、アルベール大公2世をはじめとする陣頭指揮で舵を取り、国として環境対策を多方面に施す国となった。
代表のシルベスタ氏の言葉がすべてを表している。「モナコは観光産業を守るだけではなく、地球の環境も守らなければいけないと考え、実践しています」という言葉であった。
モナコは2021年11月、モナコ公国の「サステナブル・ツーリズム白書」(全45ページ)を公にした。この白書は、モナコ公国のアルベール大公2世、そしてUNWTO(マドリードに本部を置く、観光に関する国連世界観光機関)、現地モナコ政府観光会議局により協議され製作された。
観光産業の現状を鑑み、SDGs、サステナブル・ツーリズムなど現状を分析。白書内には、4つの柱を軸に、今後における持続可能な開発と環境問題への取り組みが明細に書かれている。
1:エネルギーと気候変動
2:自然遺産の管理と生物多様性の保護
3:持続可能な年と生活環境を促進するための行動
4:モネガスク(モナコ国民)のコミュニティからの支援の動員
分かりやすく具体例を挙げるなら「2030年までに温室効果ガス排出量55%削減(1990年比)」「2050年までにカーボンニュートラルの実現」を目標とする。
人類(健康、教育、食の安全、社会経済学のインクルージョン)を最優先にする国際協力政策も制約する。このほか、海洋問題や18のモナコ特有の種を含む、880種のモナコの植物を保護するなどが挙げられている。特に、海洋保護区の保護政策は、水質のモニタリングも含め細やかだ。