記事のポイント
- 美容師の環境意識から生まれた植物由来のヴィーガンヘアオイルがある
- ヴィーガンで使える原料は限られているため、香り作りにはこだわった
- 「無理なく続けられるサステナブル」を形にした
全国にサロンを72店舗展開するstorage(ストレージ、東京・渋谷)は100%植物由来の成分で作ったヴィーガンオイルを開発した。このオイルが誕生したきっかけは美容師の環境意識だという。開発の経緯を同社の福田未季氏に聞いた。(オルタナ輪番編集長=池田真隆)

※ストレージの「haCo ヴィーガンオイル」は、オルタナとサステナ経営協会が共催する「サステナブル★セレクション2025」の三つ星に選ばれました。
※「サステナブル★セレクション」とは、サステナブル(持続可能)な理念と手法で開発された製品・サービスを選定し推奨する仕組みです。
一つ星(★)は、製品・サービスが、持続可能な社会づくりに貢献していることを表します。
二つ星(★★)は、★に加え、企業・組織がサステナブル経営に取り組んでいることを表します。
三つ星(★★★)は、★★の中から特に大きな社会的インパクトを生み出していることを表します。
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――ヴィーガンヘアオイルは、どのようなきっかけで開発しましたか。
実は、私が最初に「作ろう」と言い出したわけではありません。もともとは、美容師の中から「自分たちの手で商材を作りたい」という声が上がったのが始まりです。2021年頃から、少しずつそうした話が出てきました。
美容師という職業は、日々お客様の髪や肌に触れる仕事なので、成分や原料に対する感度が高い人が多い。特に最近は、SDGsやサステナブル、ヴィーガンといったテーマに関心を持つ美容師が想像以上に多いと感じています。

――美容師の間で、そうした環境意識が高まっている背景は何だと思いますか。
美容師は、もともと「意識が高い」と言われる職業かもしれません。弊社でも、美容師発信でヘアドネーションの取り組みを行ったり、シャンプーの量り売り、カラー剤チューブのリサイクルなどを実施したりしてきました。
業界全体を見ると、まだ多数派とは言えませんが、オーガニックやヴィーガンに対する抵抗感は確実に減っています。以前は「ケミカルじゃないと使えない」という空気がありましたが、今は「使える」と受け入れられ始めていると感じます。
■自然派でも香水のような香りと鮮やかな色味に
――商品ジャンルとして、なぜヘアオイルを選んだのですか。
日常的に使いやすく、なおかつヴィーガンとの相性が良いものを考えた結果です。当時はヘアオイルが市場でも主流で、ニーズが高かった。
正直に言うと、ヴィーガンだと「良いものが作りづらい」商品もあります。その点、オイルであれば、ヴィーガンでも品質や使用感を妥協せずに作れると判断しました。
――開発はどのような体制で進めましたか。
私は美容師ではないので、中身に関しては必ず美容師をチームに入れました。成分に詳しい美容師を中心に、最初は6人ほどでスタートし、意見を出し合いながら進めていきました。
美容師の目は本当に厳しくて、少しでも納得できない点があると、はっきり「良くない」と言われます。その基準をクリアするのは簡単ではありませんでした。
――特に難しかった点はどこですか。
やはり「完全ヴィーガン」であることですね。動物由来成分を一切使えない中で、テクスチャーや仕上がりを調整するのは非常に大変でした。
さらに、香りにも強いこだわりがありました。自然派ブランドにありがちな方向性ではなく、もっと多くの人に手に取ってもらえるよう、あえて香水のような香りと鮮やかな色味を選びました。ただ、ヴィーガンで使える原料は限られているため、香り作りは特に苦労しました。

■「社会課題を押し付けない」
――香りはどのように設計しましたか。
合成香料を使っていますが、ヘアオイルは基材の香りや粘性によって、同じ香料でも印象が大きく変わります。理想の香りに近づけるために、成分との相性を何度も検証しました。これは想像以上に難しい作業でしたね。
――ターゲットは誰ですか。
基本的には「美容室に来るすべての方」です。ヴィーガンに関心のある方はもちろんですが、実はそこに強く興味がない人にも使ってほしい。
意識して選ばなくても、「使ったら結果的に社会課題の解決に貢献していた」という状態が理想でした。社会課題を押し付けるのではなく、気付いたら(課題解決に)繋がっていた、という距離感を大切にしています。
――実際に販売してみて、どのような層に支持されていますか。
結果としては、20代から30代の女性が中心ですが、10代から50代まで幅広く使っていただいています。ヴィーガンという特性から、敏感肌の方やお子様にも使いやすく、年齢の高い方が口コミを書いてくださるケースも多いですね。
――購入理由としては、機能性とヴィーガン性、どちらが強いと感じますか。
全体で見ると、シンプルに「ヘアオイルとして良いから」という理由が一番多いと思います。それは狙い通りでした。

■「無理なく続けられるサステナブル」を形に
――この製品が美容業界に与えたインパクトをどう捉えていますか。
美容室運営会社が自社商品を作る例はありますが、ここまでオープンに、ロフトやハンズなど外部販路にも広げているケースは多くありません。その点では、業界内でも反響がありました。
――今後の展開について教えてください。
現在はヘアセラムをはじめ、ヘアミルクやバーム、さらにはスキンケアや雑貨まで、ヴィーガンという軸でさまざまな開発を進めています。
簡単ではありませんが、商品数を増やし、美容業界全体のイメージを少しずつ変えていけきたい。これからも「無理なく続けられるサステナブル」を形にしていきたいと思っています。



