サステナ経営塾2025:[コクヨの経営戦略としてのインクルーシブデザイン~ダイバーシティをイノベーションの源泉に~] 井田幸男・コクヨCSV本部サステナビリティ推進室理事

オルタナは1月21日、サステナ経営塾21期下期第4回を開いた。第4講には、コクヨの井田幸男・CSV本部サステナビリティ推進室理事が登壇し、「コクヨの経営戦略としてのインクルーシブデザイン」と題して講義した。講義の要旨をまとめた。 

コクヨの井田幸男・CSV本部サステナビリティ推進室理事

・コクヨは1905年に大福帳(和式帳簿)の表紙製造の事業を開始し、時代ごとに変化する社会の課題に向き合いながら事業を拡大してきた。現在は、「ワクワクする未来のワークとライフをヨコクする」というパーパスのもと、ワークスタイル領域とライフスタイル領域で事業を展開している。 

・井田理事がサステナビリティ推進を担当することになった当時、従来のマテリアリティ策定は、外部基準に沿って整理するほど「他社と似た内容になりやすい」という課題を感じていた。副社長からは「反対しようのない議題について、イエスを求めている。それで楽しいのか」といった問題提起もあった。そこで、コクヨらしさが伝わるサステナビリティのあり方を模索した。 

・コクヨは2022年、サステナブル経営指針「自律協働社会の実現に向け、ワクワクする未来のワークとライフをヨコクし、事業を通じて持続可能な社会を牽引していく。」を掲げた。特に、力を入れている取り組みが、「インクルーシブデザイン」だ。 

・同社は障がいを個人の問題とみなすのではなく、「社会や環境の設計によって生まれる不便」と捉える「障がいの社会モデル」の考え方を重視する。障がいのある社員と共に働きながら、社会のバリアを減らす商品・サービスを開発することを目指す。 

・インクルーシブデザインの実装にあたっては、開発プロセスを4段階(テーマ設定、課題発見・アイデア議論、プロト評価、最終確認)で整理し、障がいのある社員が上流工程から参加できる仕組みを整備した。当事者視点が商品価値の向上につながり、取り組みが社内に定着し始めたという。 

・具体的な商品例としては、左利きの人や握力が弱い人でも使いやすいハサミ、色覚多様性に配慮した暗記シート、手の力が弱い人でも開けやすいペットボトルなどだ。井田理事は「特定の人の困りごとを起点に設計することで、結果的に一般の利用者にとっても『疲れにくい』『使いやすい』といった価値が広がった」と強調する。 

・同社はKPIとして、2030年までに「新商品の過半をインクルーシブプロセスから生み出す」ことを掲げている。2024年時点で新商品の26.6%がインクルーシブデザインによるものとなった。2030年までに50%を目指す。 

・コクヨは、未来の社会像として「自律協働社会」を掲げている。自由な個人と健全な社会を両立させながら、社会に対してイノベーションを生み出す文化をつくり出すことを目指す考え方だ。具体策の1つとして、社員の自立を促す「社内副業制度(20%ルール)」を導入した。毎年70件を超える求人票が出され、100人以上の社員が社内副業に挑戦している。 

・さらに、オフィスを「社員のための空間」としてだけでなく、「社会を分母に捉え直す」視点で再設計し、地域に開放する取り組みも進めている。社内外の交流を生み出し、協働や共創が生まれる場づくりを通じて、社員の自立と社会との接点を強化している。 

・井田理事は、サステナブル経営を推進する上では「誰のために、何のために、誰が動くのか」を明確にすることが重要だと述べた。投資家向けの外形的な対応にとどまらず、企業文化や意思決定の仕組みを変えることで、サステナビリティを企業の成長と価値創造につなげるべきだと指摘した。 

susbuin

サステナ経営塾

株式会社オルタナは2011年にサステナビリティ・CSRを学ぶ「CSR部員塾」を発足しました。その後、「サステナビリティ部員塾」に改称し、2023年度から「サステナ経営塾」として新たにスタートします。2011年以来、これまで延べ約700社900人の方に受講していただきました。上期はサステナビリティ/ESG初任者向けに基本的な知識を伝授します。下期はサステナビリティ/ESG実務担当者として必要な実践的知識やノウハウを伝授します。サステナ経営塾公式HPはこちら

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キーワード: #サステナビリティ

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