食品企業3割がアニマルウェルフェア方針、実効性に課題も

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記事のポイント


  1. NPOが日本の主要食品企業のアニマルウェルフェアの取り組みを評価した
  2. 調査対象107社のうち3割がアニマルウェルフェア方針を策定していた
  3. 10年でアニマルウェルフェアの取り組みは大きく進んだが、実効性には課題も

認定NPO法人アニマルライツセンター(ARC)はこのほど、日本の主要食品企業を対象に、アニマルウェルフェア(動物福祉)の取り組みを評価した。調査対象107社のうち、全社的なアニマルウェルフェア方針を策定している企業は31.2%だった。2016年時点では方針を持つ企業はほぼ存在しておらず、この10年で企業の認識は大きく前進したが、具体的な制度化まで落とし込む企業はまだ少なく、取り組みの実効性が問われる。(オルタナ輪番編集長=池田真隆)

アニマルウェルフェアに取り組むと、食料供給の安定やリスク管理にもつながる

アニマルライツセンターはこのほど、「FARMWISE Impact(ファームワイズインパクト)2026」を公表した。アニマルウェルフェアについて、理念や宣言の有無だけでなく、実施体制やサプライチェーンへの適用状況、リスク管理、情報公開の水準などを総合的に評価した。企業の取り組みが実際の飼育環境の改善につながる「インパクト」をどの程度持つかを測定することを目的としている。

今回の評価では、総合スコアの中央値は3点にとどまり、理念の表明から制度化への移行はなお途上であることが明らかになった。

■鶏肉は「3.7%」と低水準、畜種によって差は大きく

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畜種別にみると、対応の進展には大きな差がある。卵分野では22.4%の企業が方針を持つ一方、豚肉は8.4%、水産は9.3%にとどまり、特に鶏肉は3.7%と極めて低水準だった。日本企業のアニマルウェルフェア対応は、畜種によって取り組みの進度に大きな偏りがあることが浮き彫りとなった。

業種別の差も顕著だ。総合スコアの平均は小売が5.28点、製造が5.15点と比較的高いのに対し、卸売・商社は2.77点、外食は2.23点にとどまる。中央値では外食が1点、商社が2点と低く、サプライチェーンの要となる分野や消費者との接点が強い業界ほど制度化が遅れている実態が示された。

全社方針の保有率でも、製造が38.9%と最も高く、外食は18.2%、小売は16.7%とばらつきがみられた。

麻布大学獣医学部の大木茂教授は、評価結果について、「高得点企業には、国際的な企業評価の対象となっている企業や欧米で事業を展開する企業が多く含まれている」と指摘した。国際市場との接点が強い企業ほど、アニマルウェルフェアへの対応を進めている傾向がみられた。

■「これからは取り組みの質とスピードが問われる」

近年、持続可能な畜産や食料システムの構築は国際的にも重要な政策課題となっている。アニマルウェルフェアはその重要な要素の一つであり、飼育環境や生産構造の改善は長期的な食料供給の安定やリスク管理にもつながるとされる。

大阪大学社会ソリューションイニシアティブ (SSI) の伊藤武志教授は、「企業の取り組みに関する情報が広がることで、購買者や投資家、労働者が企業の行動を支持する動きが強まり、社会経済の持続可能性を高める好循環が生まれることを期待している」と話した。

アニマルライツセンターの岡田千尋代表理事は「10年前はアニマルウェルフェアという言葉自体を知らない企業も多かったが、対話を重ねる中で理解は着実に広がった。3割以上の企業が方針を公表するまでに至ったことは大きな前進だ」と評価した。その一方で、「これからは取り組みの質とスピードが問われる段階に入る。企業価値としてアニマルウェルフェアをどこまで高められるかが重要になる」と指摘する。

今後の課題としては、全社的方針の拡大、期限付き目標の設定、サプライチェーン全体への適用、進捗の透明化などが挙げられる。理念として広がり始めたアニマルウェルフェアを、実効性のある制度として定着させられるか。日本の食品企業にとって、持続可能な畜産と食料システムの実現に向けた次のステージが問われている。

M.Ikeda

池田 真隆 (オルタナ輪番編集長)

株式会社オルタナ取締役、オルタナ輪番編集長 1989年東京都生まれ。立教大学文学部卒業。 環境省「中小企業の環境経営のあり方検討会」委員、農林水産省「2027年国際園芸博覧会政府出展検討会」委員、「エコアクション21」オブザイヤー審査員、社会福祉HERO’S TOKYO 最終審査員、Jリーグ「シャレン!」審査委員など。

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