記事のポイント
- 広島や瀬戸内海ではカキが歴史的な不作となった
- 兵庫県赤穂市では、例年賑わうはずのカキ小屋は見当たらなかった
- 背景には、海水温の上昇や海の酸性化といった環境変化があるとされる
今季、広島や瀬戸内海ではカキが歴史的な不作となった。筆者が2月に兵庫県赤穂市を訪れた際、例年賑わうはずのカキ小屋は見当たらなかった。水産庁は、海水温の上昇や海の酸性化、エサとなる栄養塩の不足などが原因としている。気候変動の影響で海産物の減少が進むなか、カキの不作も単なる季節ネタとして消費して良い問題ではない。(エシカルライター・宮野かがり)

日本人が愛してきた海のミルク「カキ」は、そう遠くない未来限られた人だけの食材となってしまうのだろうか。
瀬戸内海有数のカキの産地のひとつである兵庫県赤穂市では、例年12月から2月にかけてカキ小屋が立ち並び、街は活気に包まれる。だが、様相が一変した。国内最大の産地である広島県では養殖カキの大量死が発生し、水揚げ段階で8〜9割が死滅したとする報道もある。さらに、水産庁の調査によると、兵庫県内でも地域によっては8割程度の死滅が報告されている。
食品の製造・販売を行う赤穂化成(兵庫県赤穂市)の日本遺産部サブグループ長の野中香映さんも、「いつもの年であればあちらの通りにカキ小屋が並んでいるのに、今年はカキが無いから小屋も立たない」と話す。
播州赤穂駅近くの居酒屋で、カキの釜飯をオーダーしようとすると、「カキのメニューは現在提供できない」という。人もまばらな店内の様子から察するに、どうやら本日分のカキが売り切れたのではなくカキの不作が影響していることがうかがえた。
一方で、地元の老舗旅館では、地元のブランドカキをふんだんに使用した会席を提供する。さまざまなメニューに調理されたカキが次々と目の前に運ばれてくる。「ここまで聞いたカキの不作は別世界の話だったのだろうか」と目を疑う豪華さだった。
「大量死」や「不作」と言われる中、現地を訪れてみると、同じ街でもカキを食べられる人とそうでない人がいるようだ。
そもそも、カキ不作の原因は気候変動による海水温の上昇やプランクトンの減少だ。今後も海水温の上昇に歯止めがかからない状況が継続すれば、一時的な補助金だけで養殖事業者の存続は厳しいだろう。
水産庁は、夏季の高水温が瀬戸内海沿岸の各県で共通して確認されているほか、少雨による高塩分や餌となる栄養塩の不足、海洋酸性化、さらには海水の上下混合の減少による貧酸素など、複合的な要因が影響しているとみている。
兵庫県では、高水温と餌不足の影響により、例年に比べて身入りが小さい傾向が続いていたが、2月末時点でようやく回復の兆しが見え始めたという。
気候変動は、農産物や水産物の生産減少を招き、食料の分配が先進国に偏ることで、途上国との格差が拡大するとの懸念がある。カキの不作も、単なる季節の話題として消費してよい問題ではないはずだ。


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