本書によると、フランスでは幼稚園から男女の役割や「らしさ」について考えさせ、8歳から生殖のしくみを教えるなど、段階的に「愛情生活と性に関する授業」いわゆる性教育を実施している。 例えば「眠りの森の美女」の「お姫様がなぜ人待ち顔なのか」「騎士がお城で待っていて、美女が外で馬を乗り回したらどうなるか」について生徒たちが議論するなど、興味深い。しかし、学校によっては保護者から「男女が違うのは当たり前」と反対運動が起こったという。
この考え方が、「#MeToo」に反対に繋がるのだろう。男性によるセクハラを訴える「#MeToo」運動は2017年から世界中に広がったが、フランス女性の中には、男性から声をかけられることを過度に敵視するべきでないという声がある。大物女優や元モデルが堂々反論しているのだから驚きだ。もちろんフランス人女性の全員が同意見というわけではないが、それでもフランスでの性について考え方の一端を顕著に表している。
プラド夏樹さんは「#MeTooには賛成だが、どの社会にも男尊女卑が深く根付いており、ただ告発するだけでは社会を根本的に変えることはできない。今できるのは、子どもたちに性に関する正しい知識を与えて、性は自分のもの、と意識させることではないか」と話している。
最終章の「愛情と支配を混同したことはないか。相手の欲望に耳を澄ましているか」という言葉が重い。相手を思いやることから、すべては始まる。日仏の違いを痛感するとともに、パートナーと幸せな時間を持つのが何よりも大事なのだと改めて思った。ぜひ一読をすすめたい。