■なぜ企業が気候変動対策に取り組むのか
シンポジウムには、環境のトップランナー「エコ・ファースト」企業として環境大臣から認定を受けた積水ハウス、ライオン、戸田建設が登壇した。
積水ハウスの石田建一常務執行役員(環境推進担当)は「異常気象の環境では、『幸せな人生』を提供できない。だからこそ気候変動対策に取り組んでいく」と意気込みを語る。
積水ハウスグループは1999年に「環境未来宣言」を行い、2008年には、住まいからのCO2排出ゼロを目指す「2050年ビジョン」を宣言。「脱炭素」経営にいち早くかじを切った。ZEH(ゼロエネルギー住宅)の割合は85%にも上る。
ライオンCSV推進部の小笠原俊史部長は、「過去に環境に配慮した製品を販売したが、売り上げが伸びなかったという苦い経験がある」と振り返る。
それでも環境問題に対する危機感から、何度も経営層と話し合い、2019年6月には新環境目標「LION Eco Challenge 2050」を掲げた。2050年までに事業所活動におけるCO2排出量ゼロ、ライフサイクルにおけるCO2排出量半減を宣言した。
戸田建設は2019年1月、事業活動を100%再生可能エネルギーでまかなうことを宣言する「RE100」イニシアチブに加盟。2050年までに100%再生可能エネルギーにすることを目指す。
同社の価値創造推進室の樋口正一郎副室長は、「建設業界は屋根のないところで仕事をしており、気温の変化の影響を受けやすい。台風の影響も大きい」とし、異常気象のリスクを説明する。「1.5度を実現するために、サプライチェーン全体で連携し、CO2排出削減の取り組みを進めていきたい」と続けた。
積水ハウスの石田常務は、「ゴールは必達目標ではなく、あくまで『目指す方向性』。まずはなりたい企業像を描くことが重要。1.5度目標に向けた取り組みは、社会貢献ではなく、ビジネスである。単独では達成できない。みんなで力を合わせ、1.5度目標を達成しましょう」と呼びかけた。