三井住友フィナンシャルグループ(SMFG)は「2040年度をメドに石炭火力発電向け貸し出し残高をゼロにする」目標を打ち出した。29日に公表した統合報告書に盛り込んだ。目標年を掲げた「与信残高ゼロ」は、みずほFGに続いて国内2行目。環境NGO7団体は「一定の前進を歓迎する」との共同声明を発表した上で、達成時期や対象事業などの点で「パリ協定の長期目標からまだ乖離しており、更なる取り組みが必要」と主張した。(堀理雄)
「環境・持続社会」研究センター(JACSES)など環境NGO7団体の共同声明では、世界の温室効果ガスの削減目標を定めた「パリ協定」を達成するためには、「先進国では2030年までに、途上国であっても2040年までに石炭火力発電所の運転を完全に停止する必要がある」と指摘する。
2040年に与信残高をゼロにしても、融資を行った石炭火力発電所はその後も運転を継続するため、「返済完了後の運転期間も想定した上で、より早期の与信残高ゼロを達成することが求められる」とした。
また発電所事業などプロジェクト・ファイナンスの返済期限は15年程度と想定されることから、SMFGが融資を検討しているベトナムのブンアン2やバングラデシュのマタバリ5-6号機などの石炭火力発電事業へ、新規の融資契約を行う時間的余地を残していることを問題視。これらの案件は現地での環境汚染や人権侵害、また経済合理性の面など様々な問題点が指摘されている点を挙げ、「融資決定は行うべきではない」と述べた。
さらに今回の新方針の対象は、「石炭火力発電のプロジェクト・ファイナンスのみに限定されている」と指摘。石炭火力発電への依存度が高い企業や関連インフラ建設企業への投融資、石炭採掘やその他の化石燃料関連事業などについては削減の対象としていない点で「海外金融機関の投融資方針の水準と比べると、依然遅れをとっている」とし、さらなる対象の拡大を求めた。
SMFGはパリ協定をはじめとした気候変動問題への対応として、2017年12月に「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)」に署名。その情報開示の取り組みの一つとして今回、「2040年度までの石炭火力発電向け貸出金ゼロ」の目標を掲げた。8月には、開示項目の詳細を記したTCFDレポートを公開する予定だ。