オルタナ本誌35号 ■世界のソーシャルビジネス アジア・オセアニア編オーストラリア
人材不足に悩むレストラン業界と、働く意欲があるのにスキルや経験がなく、就職できない若者たち。双方のニーズを結び付けるべく、2010年にメルボルンで創設された非営利企業「Scarf (スカーフ)」は、10週間の研修プログラムを無料で提供し、その一環として、「ポップアップ」と呼ばれる期間限定レストランを運営して有給研修を行っている。(シドニー=南田登喜子)

研修生は移民や難民、身体障がい者、学校教育から離脱した若者ら、一般的に就職のハードルが高いとされる人々で、講師やメンター(指導者・助言者)を務めるのは、第一線で活躍する各分野のプロだ。
ワークショップは接遇・コミュニケーションの基本から、コーヒーの淹れ方、ビールやワインに関する知識、履歴書の書き方や面接テクニックまで多様なトピックで構成されている。
未経験者を雇うレストランはほとんどない中、「卒業生の80%が職に就き、就職先の大半は飲食にかかわる」と、創業者の一人、ハンナ・コールマンさんは胸を張る。これまでに受け入れた研修生は50人以上。「最初はおずおずとしていた彼らが、短期間に自信を付けて成長していく姿には、驚かされます」。
そのカギは、学んだことを即実践できるポップアップ・レストランにある。ポップアップ・ストアとは、空き店舗などに出店する期間限定の仮店舗のことを指す。例えば、有名ブランドが各地を巡回したり、アーティストが野外ギャラリーを展開したりする。
定休日を有効活用