「完全オーガニック」が売り
菜園を利用する人たちはすべて無農薬で野菜や花を育てている。このプロジェクトの斬新なところは、収穫された野菜の約半分をエコ・スーパーマーケットで、通常の農家から仕入れる額の約半分程度で買い上げてもらえるシステムを提供したことだ。自慢のエコ野菜をスーパーで販売してもらえるとあって野菜作りにも気合が入っているという。

現在、このパブリック・ガーデン・システムは6都市20カ所で展開され、売上高は1カ月で3500万円に上るという。
自宅フラットから歩いて5分の場所にある菜園を、2012年から利用しているアンヌ・マリーさんは、「汗水流して作った自作の野菜や果物の味は、やっぱり格別」と話す。
彼女の菜園には、じゃがいも、トマト、にんじん、レタス、西洋梨―など、野菜や樹木が植えられている。スーパーで買い取ってもらうほか、菜園利用者同士でシェアしている。
普通のスーパーで販売される野菜や果物の約40%が輸入というオランダで、これらの野菜は、正真正銘「地元産」だ。それに加え、完全オーガニックというポイントが最大の売りになり、一般商品より値段は高めでも売り上げは上々で、品切れを嘆くファンもいるほどだ。
定期的に購入する顧客によれば、スーパーで買う野菜と違い、味に深みがあるという。「野菜の形やサイズが不ぞろいで面白い。昔の野菜を思い出す」と表現する人もいる。太陽の光をたくさん浴び、手塩にかけて育てられたこれらの野菜の評判は、各メディアに頻繁に登場するようになり、大手スーパーもそれらの販売に興味を示している。
2013年夏には、老人ホームやワークショップ会場などに、これらの野菜を使った料理を配布するサービスが開始される予定だ。料理は、プロジェクトに協賛する著名レストランらが引き受ける。
「菜園を持ちたい」という夢を叶えることが、遊ぶ土地の解消にもなり、ビジネスとしても成功している。今後、どのようなプロジェクトが新たに始まるのか、注目が集まる。
*雑誌オルタナ33号(2013年6月29日発売)「世界のソーシャルビジネス」から転載