■世界のソーシャルビジネス 欧州編 英国

長年の乱獲と気候変動により、海洋資源は9割まで枯渇していると言われる(国連食糧農業機関調べ)。漁業のみで生きている5億の漁村民にとって、漁獲量減少は死活問題。「環境問題=人間の問題」として持続可能な漁業のあり方を広めているのが英ブルー・ベンチャーズだ。 (ロンドン=冨久岡 ナヲ)

海藻の養殖に励むマダガスカルの女性。「魚の保護は人々の暮らし方から」というユニークな活動が認められ、WWFをはじめ数々のコンサベーション賞を授与されている ⓒBlue Ventures

小規模漁業で生計を立てる漁師のうち97%は、南半球の開発途上国に住み、伝統的な漁法を踏襲している。

その多くが、海洋資源についての知識も、保護に対する意識も、漁業政策への発言力も持っていない。魚が捕れずに貧困度は悪化し、その結果、領海外での密猟や海賊行為にまで及んでいる。

これは、イギリスで海洋生物学を学んだアラスデア・ハリス博士が、サンゴ礁と気候変動の研究者としてマダガスカルで知った現実だった。

先進国の学者がどんなに素晴らしい保全策を考えても、住民を無視して魚からスタートしては意味がない─。そう実感した博士は2003年、エコツーリズム運営で活動資金を得つつ、漁民自身の手による海洋保護と漁村経済の活性化を促進するソーシャル・ビジネス「ブルー・ベンチャーズ」をロンドンで起業した。

最初の活動はまず、マダガスカルの村で魚の生息状況を理解してもらい、区域別に休漁期間を設けることだった。タコ漁で生計を立てていた地元漁民のベゾ族は、休漁後にタコの個体数が劇的に増え、収入が上がったことに驚いた。

その話は近隣の漁村に広まり、誰もがやり方を知りたがった。それはマダガスカル初の地域自主管理海域(LMMA)誕生につながり、草の根レベルの海洋保護革命とまで呼ばれた。10年後の今、マダガスカルには65ものLMMAがある。

漁村の収入源多様化を

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