記事のポイント
- 世界の太陽光・風力の発電量は2025年上半期、初めて石炭火力を上回った
- 再エネの急増をけん引したのが中国とインドだ
- 世界的な電力需要の増加に、再エネが十分対応できることを示す大きな転換点を迎えている
世界的に電力需要が増加する中で、2025年上半期は、太陽光・風力の発電量が初めて石炭火力を上回った。気候シンクタンクのエンバーが発表した。太陽光発電量は前年同期比で31%増加し、世界の電力需要増加分の83%を賄った。国別で、再エネの急増をけん引したのは中国とインドだ。電力需要が世界的に増加する中で、再エネの供給が追いつき、世界の電力システムは今、大きな転換期を迎えている。(オルタナ輪番編集長=北村佳代子)

英国の気候シンクタンク・エンバーが10月7日に公開した「グローバル電力に関する展望」によると、2025年上半期に、世界の再生可能エネルギーの発電量が初めて、石炭火力による発電量を上回った。
2025年上半期、世界の電力需要は前年同期から2.6%増加した。同期間、太陽光発電は同31.0%(+306 TWh)、風力発電は同7.7%(+97 TWh)増え、電力需要の増加分を、世界は再エネだけで十分賄えるようになった。需要増加分の83%を、太陽光だけでカバーしたことになる。一方、石炭・ガスなどの化石燃料による発電は全体で0.3%減少した。
2025年上半期の電力構成を見ると、再生可能エネルギ―は前年同期の32.7%から34.3%に上昇した。太陽光発電だけを見ると、前年同期の6.9%から8.8%となった。石炭火力は同0.6%減となり、世界の発電全体に占める比率は前年同期比34.2%から33.1%に低下した。2025年上半期、再エネ発電量は初めて石炭を上回った。
「太陽光と風力は現在、世界の電力需要増加に十分対応できる速度で拡大している。これはクリーンエネルギーが、需要増加に追いつく転換期が始まっていることを示す、重大な転換点だ」と、報告書の執筆者であるエンバーのマルゴザタ・ヴィアトロス=モティカ上級電力アナリストは力をこめた。
2025年8月には国際エネルギー機関(IEA)も報告書の中で、「遅くとも2026年には、再生可能エネルギーが、石炭火力を抜いて世界最大の電力源になる」との見込みを発表している。
参考記事:26年には再エネが化石燃料を抜き世界最大の電力源に: IEA予測

(緑の折れ線が再エネ、黒が石炭)
(c) EMBER
■中国とインドが再エネ拡大に貢献した
報告書によると、再エネの急増をけん引したのは、主として中国とインドだ。両国とも、電力需要の増加分をすべて太陽光と風力で賄ったため、石炭の使用量ならびに排出量が減少した。
中国に至っては、新たに追加した再エネ発電容量は、世界の他の地域が追加した再エネ発電容量を上回ったほどだ。その結果、中国の2025年上半期の化石燃料の使用量は、前年同期から2%減少した。
インドは、2025年上半期の電力需要が大幅に低調となった。その中で、電力需要の3倍を超える再エネ発電容量を増強したため、石炭の使用量は3.1%減、ガスの使用量は34%減となった。
中国では電源構成の構造的変革が起きているが、インドでに関しては、再エネが化石を燃料を上回ったのは一時的な要因との見方もある。
対照的に米国は、再エネによる発電量は増加したものの、電力需要の拡大がそれを上回った。ガスから石炭へと燃料の転換が見られたこともあり、米国では2025年上半期に、石炭による発電量が17%増加した。
EUでは、電力需要が前年同期からわずかな伸びにとどまった。太陽光発電は急成長したが、風力と水力の発電量が天候要因などを背景に低調に推移し、ガスが14%、石炭が1.1%増加した。
■太陽光発電は記録的な成長を示す
世界の太陽光発電が電力構成に占める割合は、前年同期の6.9%から8.8%に上昇した。
地域別では、太陽光発電の増加分の55%を占めたのが中国だ。そこに米国(14%)、EU(12%)、インド(5.6%)、ブラジル(3.2%)が続き、それ以外の地域が占めたのはわずか9%だった。
電力の10%超を太陽光で賄う国・地域は、29カ国に上った。2024年上半期の22カ国、2021年上半期のわずか11カ国から着実に増えている。
■日本の化石燃料依存率は中国より高い
■中国は輸出先のクリーンエネルギー転換もけん引する