記事のポイント
- 三菱UFJ信託銀行は「社会的インパクト」を9指標で定量化へ
- 同行は、社会課題の解決を通して「受託者責任」を果たす考えだ
- 社会的インパクト実現までの道筋(ロジックモデル)も開示した
三菱UFJ信託銀行は「社会的インパクト」を9指標で定量化する。同行は、社会課題の解決を通して「受託者責任」を果たす考えだ。「社会的インパクト志向の事業運営」を経営の中核に据える。2024年から「IMPACT BOOK」を発行し、社会的インパクト評価指標(KPI)、インパクト実現までの道筋(ロジックモデル)を開示している。(オルタナ総研フェロー=室井孝之)

「IMPACT BOOK 2025」では、サステナビリティ優先課題として「持続可能な社会」「活力溢れる社会」「強靭な社会」を設定した。これらの課題に対する社会的インパクト評価指標(KPI)とインパクト実現までの道筋(ロジックモデル)を開示した。
社会的インパクト評価指標(KPI)は、次の9指標だ。「持続可能な社会」では、「①カーボンニュートラル社会の実現」「②自然資本・生物多様性の再生」を定めた。「活力溢れる社会」では、「③産業育成、イノベーション支援」「④少子高齢化への対応」「⑤金融サービスへのアクセス拡大」「⑥人的資本重視の経営」をKPIに置く。
「強靭な社会」については、「⑦人権尊重」「⑧安心・安全なサービスの提供」⑨「強固な企業ガバナンスの発揮」とした。
ロジックモデルとは、事業や組織が目指す成果や社会的な変化に向けた道筋を視覚的に整理した事業の設計図だ。カーボンニュートラル社会の実現」「④少子高齢化への対応」のKPI、ロジックモデルを次の様に示した。

「カーボンニュートラル社会の実現」では、「環境保全の観点も踏まえたGX推進に資する商品開発・販売」として、2027年3月を達成時期とし、「GX商品販売残高2780億円」をKPIとして設定した(2024年実績、372億円)。
「GX商品開発・販売」によって、企業の「GX商品を通じた自社GX取り組みの訴求と認知度向上、推進の加速」を通じて、「気候関連リスク抑制、環境保全の観点も踏まえた産業化(GX)の推進」に結び付けるというロジックだ。
「④少子高齢化への対応」では、「認知・身体機能低下などによる不安などを踏まえた承継・管理サービスの提供」として、同時期に「次世代承継・管理型商品受託件数8万件」にKPIを設定した(2024年実績2万件)。
「本人の意思能力低下時に家族が『資金管理』・『引出・状況閲覧』可能なサービス」を通じ、本人の認知機能が低下しても、家族が代わりに必要な時に必要な資金を引出すことができる「社会的インパクト」を創出するというロジックだ。
同行は、「社会的インパクトを定量的・定性的に測定・把握し、各種活動の社会的な効果や価値を踏まえ、より多くの社会課題の解決に貢献していく」と強調した。
三菱UFJ信託銀行は、社会課題の解決に貢献し、「フィデューシャリー」としての責任を果たすべく、社会的インパクトを重視した事業運営を実践する。
フィデューシャリーとは、「受託者」を意味し、特に金融業界で「フィデューシャリー・デューティー(受託者責任)」という形で、金融機関が顧客から信頼を託され、その利益を最優先して行動すべき義務を指す。



