キンコーズ・ジャパン、紙の地産地消を実現した「舞台裏」

記事のポイント


  1. キンコーズ・ジャパンは石川県内で「紙の地産地消」に取り組む
  2. 県内の製紙会社などと連携し、地域で回収した古紙を再生紙に変えた
  3. 復興支援にもつながるこの取り組みはどのようにして実現したのか

キンコーズ・ジャパンは石川県内で「紙の地産地消」に取り組む。県内の製紙会社や紙卸問屋などと連携し、地域で回収した古紙を再生紙に変えた。復興支援にもつながるこの取り組みはどのようにして実現したのか、同社の事業推進部事業推進グループに所属する松本由美子氏に聞いた。(聞き手・オルタナ輪番編集長=池田真隆)

キンコーズ・ジャパンの再生紙「おきあがみ」はサステナブル・セレクション三つ星に輝いた。写真左から、キンコーズ・ジャパンの野上朝子 広報・サステナビリティグループ部長、松本氏、審査委員を務めた認定NPO法人フェアトレード・ラベル・ジャパンの潮崎真惟子事務局長

※キンコーズ・ジャパンの「おきあがみ」は、オルタナとサステナ経営協会が共催する「サステナブル★セレクション2025」の三つ星に選ばれました。
「サステナブル★セレクション」とは、サステナブル(持続可能)な理念と手法で開発された製品・サービスを選定し推奨する仕組みです。

一つ星(★)は、製品・サービスが、持続可能な社会づくりに貢献していることを表します。
二つ星(★★)は、★に加え、企業・組織がサステナブル経営に取り組んでいることを表します。
三つ星(★★★)は、★★の中から特に大きな社会的インパクトを生み出していることを表します。
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紙の地産地消を実現した「おきあがみ」

――再生紙「おきあがみ」を開発したきっかけを教えてください。

発想の原点は3年ほど前にあります。地産地消といった考え方が社会に広がる中で、「地域のものを地域で使う」という価値が改めて注目されていると考えました。

私たちはオンデマンド印刷で「必要な時に、必要な部数だけ刷る」サービスを提供してきましたが、その思想をもう一段広げて、「紙そのものも地域で循環できないか」と考えたのがきっかけです。そこから「紙の地産地消」というコンセプトが生まれました。

「製紙関連企業が集まる金沢が条件に合っていた」

――最初の展開地域として石川県を選んだ理由は何ですか。

キンコーズの店舗があり、なおかつ製紙関連企業が集積している地域を調べた結果、石川県、特に金沢が最も条件に合っていました。地域共創を掲げる以上、まずは自分たちが店舗を構える地域から始めるべきだと考えました。

複数の候補はありましたが、製紙会社や流通のつながりが比較的整っていたことが決め手です。

「再生」という言葉には資源循環と復興の二つの意味を込めた

――商品化まではどのようなプロセスでしたか。

構想自体は2022年に始まりました。2023年11月には「おきあがみ」という名称を公募し、正式発表を予定していたのですが、2024年1月に能登半島地震が発生し、発表は一度見送り、売上高の一部を義援金として寄付する「再生の紙」として生まれ変わりました

■「おきあがみ」、ひらがな表記で親しみやすく

――「おきあがみ」という名前にはどのような意味が込められていますか。

石川県の伝統工芸である「加賀八幡起上(かがおきあがり)」に由来しています。倒れても何度でも起き上がる縁起物ですが、そこに「紙がもう一度生まれ変わる」という再生の意味を重ねました。

ひらがな表記にしたのは、堅苦しさをなくし、誰でも親しみやすく感じてもらいたかったからです。

――震災はこのプロジェクトにどのような影響を与えましたか。

非常に大きかったです。地場の企業も被災し、私たちとしても「この取り組みをどう続けるべきか」を改めて考えました。

その結果、売上高の一部を寄付する形で、長期的に復興を支援する仕組みにしました。復興は短期間で終わるものではありません。だからこそ、事業として続ける意味があると考えています。

松本氏は東京と石川を複数回往復して、地元企業との調整を重ねた

――商品にはロゴが入っていますが、意図は何ですか。

一目で「これはおきあがみだ」と分かるようにするためです。復興支援につながる商品であることを、使う人自身が周囲に伝えられるようにしたかった。あえて主張することで、会話や共感が生まれることも期待しています。

■「それでも使いたい紙」に価値が出る

――立ち上げ当初は、どのような点に注力しましたか。

初年度は売上高よりも、地域との関係づくりを重視しました。石川県庁のエコ認定商品への申請、金沢市役所のSDGs(イマジン)加盟など、自治体のSDGs関連の取り組みへの提案など、まずは「知ってもらう」「信頼してもらう」ことを優先しています。

――実際に購入する人は、何を評価していると感じますか。

価格よりも、紙の風合いや触り心地、そして背景にあるストーリーを評価していただいている印象です。ペーパーレスが進む時代だからこそ、「それでも使いたい紙」に価値が集まっていると感じています。

■「そんな紙を作る人はいない」と言われたことも

――地域との関係構築で苦労した点はありますか。

正直、最初は簡単ではありませんでした。地域愛が強い分、「外から来た企業」に対する警戒感もあります。「そんな紙を作る人はいない」と言われたこともありました。

それでも、実物がない段階から毎月東京から石川に通い続け、資料を具体化し、本気度を伝え続けました。結果として、「本当に通い続ける人だ」と信頼してもらえたと思います。

――今後の展望について教えてください。
将来的には、石川県に限らず、全国をブロックごとに分けて、同じ志を持つ製紙会社や和紙工房と連携していきたいと考えています。

活動の主体は地域に根ざした企業が担い、私たちは外から支える。その形を全国に広げることで、「紙の地産地消」を一過性ではないモデルにしていきたいですね。

M.Ikeda

池田 真隆 (オルタナ輪番編集長)

株式会社オルタナ取締役、オルタナ輪番編集長 1989年東京都生まれ。立教大学文学部卒業。 環境省「中小企業の環境経営のあり方検討会」委員、農林水産省「2027年国際園芸博覧会政府出展検討会」委員、「エコアクション21」オブザイヤー審査員、社会福祉HERO’S TOKYO 最終審査員、Jリーグ「シャレン!」審査委員など。

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