有田川町が消滅可能性都市から脱却、地域課題をコンテンツに

人口減少と少子高齢化で行政運営が困難になると推測される自治体を指す「消滅可能性都市」。2014年の発表後には地方創生の旗印のもと、各地域で官民連携を掲げ、消滅可能性都市脱却を目指す取り組みが展開されてきた。その成果ともいえる10年後の再公表では、指標が改善し、消滅可能性都市を脱却した自治体も存在する。そんなまちのひとつが和歌山県の中部に位置する有田川町だ。(上野山友之) 

過疎と少子高齢化。地方の山間部では、自治組織の解散など、域内共助が立ち行かなくなる局面を迎えている。それにより、長年紡がれてきた文化の伝承や日常生活を維持する道路や溝の清掃にも影響を及ぼしている。苦境に立たされる過疎地で、その課題を逆手に、地域の活力を呼び起こす取り組みがある。

有田川町では、2015年から「住民主体のまちづくり」を推進し、ワークショップやフォーラムを開催。地域で活動する市民団体が多く生まれ、まちのガイドブックの作成を市民団体が担うなど、官民協働での持続可能な地域づくりが行われている。

同町で活躍する一般社団法人しろにしも、そのアイデアや企画から、県内外に影響力をもつ団体のひとつだ。しろにしは、2022年設立。2023年6月からはドミトリーや企業の共同寮、コワーキングスペースを備えた移住就業支援を目的とする町施設の管理を始め、当面の動きが固まった。しかし、稼働の翌月には、その後の取組みの方向性を決定づける出来事が起きる。

■ 各地から収穫ボランティアが駆けつける

山椒
ぶどう山椒の収穫に各地からボランティアが集まった

同年夏、特産のぶどう山椒が豊作で、農家間での共助で収穫を乗り切る同町では、人手が足りず、収穫しきれないとの声がしろにしに舞い込む。そこで、しろにしでは地域外から収穫ボランティアを募る「ぶどう山椒収穫レスキュー」を企画した。

農家からは、手弁当で収穫を手伝ってくれる神様のような人がいるのかと不安な声も聞かれたが、関西圏を中心に関東からも参加者が現れ、総勢30人超が産地のピンチを救った。現在も続く同企画は、毎年80人を超える参加者を集め、観光やワーケーションと併せて地域に親しみ、移住に至った参加者もいるという。

茅を刈っている写真
ススキの名所・生石高原では「茅刈りレスキュー」も

2025年には国重要文化財に指定されるお堂の茅葺き屋根の葺き替えに向け、同町のススキの名所・生石高原で「茅刈りレスキュー」を実施。重要文化財や観光名所を身近に感じる企画とあって、県内外から105人を集め、多くの茅が採取され、翌年の施工を待っている。 

しろにしでは2025年に「地域維持レスキュー」で商標を取得。ゲストハウスオーナーの顔も持つ楠部睦美代表理事は「地域外の人にとっては地域に関わるきっかけとなり、地域内の人にとっては地元への愛着や誇りを育むきっかけとなればうれしい」と想いを語ってくれた。

自治体運営に支障をきたすことなく、地域が未来へと続いていく中では、行政による公助ではなく、地域間や住民主体の共助の重要性が増すことは想像に難くない。そのためには、地域課題を逆手に取り、地域の魅力や関わりしろに変換する同法人のような取組みが全国に広がることに期待したい。

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オルタナ編集部

サステナブル・ビジネス・マガジン「オルタナ」は2007年創刊。重点取材分野は、環境/CSR/サステナビリティ自然エネルギー/第一次産業/ソーシャルイノベーション/エシカル消費などです。サステナ経営検定やサステナビリティ部員塾も主宰しています。

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キーワード: #地方創生

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