■オルタナ本誌61号「森を守れが森を殺す」(田中淳夫)から
いつだったか、某レストランチェーンの取材にうかがったことがある。その会社ではバイキング形式の店を何店舗か展開していた。
若い女性の仕入れ担当者に倉庫を見せてもらうと、キャベツが山積みだった。ただし、いずれも割れている。
「今朝農家から持ち込まれたんです。雹ひょうが降って割れてしまったキャベツを引き取ってくれないかと言って。すぐ全量買い取りました」
あっさり言う。割れていても調理すれば問題はない。しかし数百玉である。「全店にキャベツを使うメニューを考えるよう連絡を入れました。店頭でも『訳ありキャベツ』として販売します。それでも売れ残ったら社員に買ってもらえるでしょう。全量売り切りますよ」
自信ありげだった。何も彼女が暴走したのではない。このチェーン店は、農家の持ち込む野菜を全量、言い値で買うポリシーを持っているのだ。
そしてその野菜で作れる料理を考える。
*この続きは雑誌「オルタナ」61号(第一特集「新型コロナと持続可能性」、6月30日発売)に掲載しています
筆者:たなか・あつお 森林ジャーナリスト。1959年生まれ。主に森林・林業・山村をテーマに執筆活動を続ける。著書に『森と日本人の1500年』(平凡社新書)『樹木葬という選択~緑の埋葬で森になる』『鹿と日本人』(ともに築地書館)『森は怪しいワンダーランド』『絶望の林業』(ともに新泉社)などがある。