ロングインタビュー「この会社はすでに一族のものではない」

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■「社会貢献と生きがいの生活舞台」を

――人並みにやっているくらいでは、たぶん良くは言われないと思います。ここ10年くらいの流れで言うと、株式を公開していて逆に非公開にするとか、そもそも株式公開がいいことかどうかという議論もあると思いますが、その辺をどうお考えでしょうか。

伊奈:この辺ですとポッカコーポレーションが非公開ですね。かなり大きな会社でもいわゆるMBO(マネージメント・バイ・アウト、経営陣による自社買収)がありました。外向きには「長期的な視野で経営できない」などとなっていますが、要は自分たちのやりたいようにやれないからという理由が多いですよね。そういう意味で私はちょっとそのMBOというのは、そんなに積極的に賛成ではないです。

――ずっと会社を経営されてきて、結論的には「会社とはそもそもどういう存在なのか」と考えて来られましたか。

伊奈:それはずっと考えてきたテーマです。私なりの一応の結論は、会社というのは要するに人に仕事を提供する組織であるというか、INAXの企業理念「INAX5」に出てくる「INAXは私たちが仕事を通して社会に貢献し、生きがいを見い出す生活舞台です」という内容そのものです。

要するに人に仕事というものを提供し、その単なる収入を得ることは第一番だというのは、私は全く否定していませんが、それと合わせて自分も社会に貢献でき、自分も成長していく。そういうことのできる仕事をできるだけ一人でも多くの人に提供するというのが、企業が社会に存在を許される所以ではないかな、そういうふうに私は思っています。

■企業は社会に存在を許してもらっている

――社会に存在を許してもらう、つまり「操業許可」という考えもありますね。

伊奈:存在を許してもらっているから存在しているのです。存在させてもらうには、良い商品、良いサービスだけでなく、多くの人に仕事を通して自分が生活する、有意義に生活できる仕事を提供できるというのが、企業の一番の役割なのではないかというのが、私なりの考え方なのです。

――それが長年会社を経営してこられた中での結論ですね。「INAX5」をお作りになった背景はなんでしたか。

伊奈:やはりこの「X1」の考え方に私は非常に強い想いがありました。普通なら、何をする企業かとか、どういうスタンスか、とかが企業理念に出てきます。しかし、会社とは何のためにあるのかとか、みんながこうやって会社に来て仕事をしているというのはどういう意味があるのか、みんなが組織として仕事をしているとはどういうことなのだとか、そういうことを最初にはっきりしておいて、それから何をやる会社だとか、どういうやり方かなどは、その次のステップではないかと思ったのです。

■全国の拠点を歩いて社員と議論

――なるほど。だから「X1」にまず社会貢献という言葉が出てくるのですね。

伊奈:伊奈製陶がINAXに変わって、伊奈製陶は何のためにあるのかを皆で共有しようということをどうしてもやりたくて。議論をしているうちに、社名変更から実は半年遅れなのですよね、これは。社名変更と同時にスタートすべくやっていたのですけどね、これは勝手に自分の決めたいように決めるわけではないし、かといってどうしてもこれは入れたいし、ということで全国歩いてみんなと議論して、半年かかりました。

――皆というのは役員の方ですか。

伊奈:役員だけではなくて全職場の幹部ですよね。300人くらいだったと思います。10人くらいずつ30職場くらい行っていますかね。

――その中で「X1」に「社会に貢献し」という、まさに僕らのCSRの方針なのですけども、社会貢献が「X1」に入ったというのはどなたのご意志だったのでしょうか

伊奈:「社会に貢献し」というのは要するに世の中に役に立つ仕事をする場を提供する組織ですよという意味です。

この前に、この理念に至るもう一つ前に、もう少し簡単な、それに近いようなものがあるのです。それは、会社というのは、会社があって人が雇われているのではなくて、何千人かの人が集まっているものが会社なのだということをその時は表現しました。

――つまり、単に「雇う」「雇われる」ではないということですね。

伊奈:人が集まっていること自体が会社なのだと。そういう考えがあって、それの延長線上にあるかなと思うのです。

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2010年6月8日(火)13:35

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