■ AOCに除外された地場ぶどう品種ワイン
ボルドーワインのような味のワインを作ることが良しとされていた70年代に、前当主のロベール・プラジョル氏(78歳)が、ほとんど消滅していた地場ぶどう品種の再生に取り組み、10年以上にわたる調査と苗植えを重ねて、ル・プリュヌラール、ロンダンクなど、ガイヤックならではのぶどう品種(5種類)のモノセパージュ(単一品種)ワインを商品化した。
ところが、最高級ワインの格付けラベル「ガイヤックAOC」(原産地呼称統制、2009年からEU圏共通のAOPに変更されている)が規定しているぶどう品種リストから、地場ぶどう品種の一部が除外されていることが判明した。その理由から、同社が販売している15種類のワインのうち3種類は、一番低い格付けの「ヴァン・ドゥ・フランス」になっている。
ガイヤックのテロワールの特徴を最大限表現するために、ぶどうの有機栽培だけでなく、自然醸造も実践している醸造元「ドメーン・プラジョル」のワインの一部が、AOCから除外されているという事実は、AOCの規定を守るとテロワールを尊重したワインが作れないという矛盾を裏付けることができる。
仏メディアがこの話に目をつけて、「ドメーン・プラジョル」を「AOC謀反派ヴィニュロン」(ヴィニュロンは仏語でワイン醸造人の意味)として紹介して話題になり、ガイヤックではもちろん、ほかのワイン産地でも追従派が増えている。
同社のワインは現在、フランスのトレンディーなワインブランドの一つとして、パリの有名ワインショップに並んでいる。
現当主のベルナール・プラジョル氏によると、「客層はおいしいオーガニックワインであるだけでなく、そのストーリー性を重視する30代の新しいワイン愛好家」と言う。
こうした地道な取り組みの成果によって、ガイヤックの名声が高まり、地元でワインの仕事に携わる若い世代の人たちが自信と希望を持ち、地域全体が活気付いている。