河口 真理子(株式会社大和総研調査本部主席研究員)
おそらく日本ではじめての本格的な「エシカルウェディング」が2012年9月9日、行われました。「エシカル」は、本誌の読者にとっては目新しいものではないでしょうが、一般的ではありません。
英語の「ethical」は、訳せば「倫理」ですが、それだけではない。カタカナのエシカルは「人・社会や地球のことを考えた『倫理的に正しい』消費行動やライフスタイルを指し、エコだけでなくフェアトレードや社会貢献も含んだ考え方*1」と定義されます。ただ、ちょっと披露宴の場ではお堅い。
ふさわしい柔らかい素直な言い方を考えて、思いついたのが「地球と人・命への思いやりと共感」です。
この「思いやり」や「共感」という発想、日本では3.11後加速度的に広がっています。たとえば、震災半年後に行われた意識調査*2では、今後の社会生活において重要と考える上位3つは「他人を思いやる心」「他人との助け合い」と「環境への配慮」で、経済成長や雇用創出を上回った、という結果が報告されています。
なお、エシカルというコンセプトの発祥の地、英国では、20年以上も前の1989年に消費面から地球環境や動物愛護、途上国支援など「倫理的に正しい消費」を広める専門誌『エシカルコンシューマー』が創刊されています。
関わった人に幸せが伝播する
1998年にはエシカル・トレーディング・イニシアチブというエシカルビジネスの協会も発足。パリでは2004年からエシカルファッションショーが開催されるようになりました。
2011年に発行された『スペンド・シフト』は米国の消費動向の変化について「世界最大の消費経済を築いた需要は、今ではより多くではなく、『より良く』を望んでいる*3」と指摘しています。