日本の脱ネオニコチノイド農薬、道筋はどこに

EUをはじめ米国や韓国でも使用規制への動きが始まったネオニコチノイド系農薬だが、日本では今年5月に食品残留基準が緩和。養蜂家はネオニコチノイド系農薬の散布により「ミツバチへの被害が続いている」と訴える。しかし農家は受粉のためのミツバチを海外からの輸入に依存し、被害は表面化しにくい。(オルタナ編集委員=斉藤円華)

■ネオニコ使用は「第二のアスベストになる」

専門家は「日本で一番使われている農薬がネオニコチノイド。(現在の使用状態が続けば)第二のアスベスト(石綿)になる」と指摘する
専門家は「日本で一番使われている農薬がネオニコチノイド。(現在の使用状態が続けば)第二のアスベスト(石綿)になる」と指摘する

「日本で一番使われている農薬がネオニコチノイド。(現在の使用状態が続けば)第二のアスベスト(石綿)になる」。16日昼、環境NGOグリーンピース・ジャパンが主催するネオニコチノイド系農薬についての国会内勉強会で、金沢大学名誉教授の山田敏郎氏は訴えた。

これまで山田氏は、ネオニコチノイドの毒性は花粉媒介生物、とりわけミツバチの大量死と相関関係があることを早くから指摘。花粉媒介生物への悪影響は農業生産に直結する重大な問題だ。ところが日本では、この問題の深刻さが社会的に認識されているとは言いがたい。

ミツバチ大量死が表面化しにくい要因の一つとして、山田氏は農林水産省の調査フローを問題視する。養蜂家から大量死の第一報を受けた際、農水省は最初に農薬影響ではなく、ウィルスやダニの有無を検査。検出されればそこで調査が終了するという。「農薬で衰弱したハチの巣箱はウィルスやダニに襲われやすい。全てを同時に検査するべきだ」と山田氏は指摘する。

■被害訴えにくい養蜂家の事情も

一方、同じく勉強会に出席した長野県養蜂協会の依田清二代表は、養蜂家が置かれている状況について「農家と摩擦を起こしたくない面がある」と明かす。

「養蜂家は果樹園のそばに巣箱を置く。養蜂家がネオニコチノイドの使用を問題にすると『巣箱を持ってこないで』と言われかねない」と依田氏。本来、農家にとって養蜂家は作物の受粉を担う重要な役割を担っている。養蜂家もその見返りとしてハチミツを生産。ところがネオニコチノイドの使用が、長年培われてきた協力関係に亀裂を生んでいる。

また、養蜂家が被害を訴えにくいもう一つの理由が、被害報告を届け出る際の煩雑さだ。「日本養蜂協会(日蜂協)に被害を届け出る際、写真や地図、専門機関の分析結果などを添えて提出する決まりだ。しかし分析には2~3万円の費用がかかることに加え、普通の養蜂家にとってこうした手続は大変だ」(依田氏)

海外からの受粉用ミツバチの輸入増加も、問題を見えにくくしている。山田氏いわく「日本は女王バチを大量に輸入して一時的にしのいでいる状況」。輸出元はハワイや豪州などだが、受粉を輸入ミツバチに依存する農業は果たして持続可能といえるのか。過去には豪州でハチの輸出が一時的に停止し、国内でハチ不足に見舞われたこともある。

グリーンピース・ジャパンの関根彩子氏は「欧州委員会は受粉できないことによる経済的損失を算出し、それがネオニコチノイド使用のモラトリアム(一時停止)につながっている」と話す。日本もネオニコチノイドの使用による負の影響から目をそらすべきではない。

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オルタナ編集部

サステナブル・ビジネス・マガジン「オルタナ」は2007年創刊。重点取材分野は、環境/CSR/サステナビリティ自然エネルギー/第一次産業/ソーシャルイノベーション/エシカル消費などです。サステナ経営検定やサステナビリティ部員塾も主宰しています。

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