被災地のプロボノ支援から地方創生のコンサルへ

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震災直後からプロボノとして自治体や企業、NPO などを対象に、事業計画の策定や国内外の基金・ファンドとのマッチングといったコンサルティング支援を展開してきたPwC コンサルティング。2013 年 11 月には専門組織「東北イノベーション推進室」を設置し、プロボノ活動から地方創生の本格的なサービスに舵を切った。2014年9月、被災地域のステージが「復旧」から「復興」へ変化するタイミングで、岩手県沿岸広域振興局との連携により、PwC Japanグループ(※)の他法人を巻き込み、個別事業者に対する経営指導をスタート。この2年間で見えてきた東北の課題、企業として東北の復興に関わる意義はどこにあるのか。(一般社団法人RCF=荒井美穂子)

7月にプロボノで行われた会計相談の様子

7月にプロボノで行われた会計相談の様子

■新たな取り組みで地元の復興をスピードUP
震災直後から被災地での支援に取り組んできたPwCコンサルティング。2012 年からは東北大学や東北ニュービジネス協議会が中心となって被災地の人材育成を行う「東北未来創造イニシアティブ」に参画し、事務局に社員を1 人派遣した。

2014 年からは「WORK FOR 東北」に参画し福島県双葉郡の教育再建を行う「福島県双葉郡教育復興ビジョン推進協議会」にも社員を派遣するなど地域に入り込む形でのプロボノ支援を行ってきた。

2014年9月には岩手県沿岸広域振興局と産業復興に向けた協力体制を構築することで、それまで以上にシステマティックな展開ができるようになった。

当時は、震災から 3 年半が経過し、元に戻す「復旧」から事業の成長・拡大、つまり革新的なビジネスモデルの構築が求められる「復興」へとフェーズが変化していた一方で、企業やボランティアによる支援が急速に縮小していた。

そうした中で地域と外部をつなぐ NPO 組織RCF のコーディネートにより、被災企業の支援先を探していた沿岸広域振興局との連携が生まれた。

岩手県沿岸各地で主に経営者を対象にしたセミナーを開催。2015年1月には、個別事業者に対する経営指導をスタートした。財務管理などの経営指導を行っているほか、PwC Japanグループの一員であるPwCあらた有限責任監査法人を巻き込み、会計士チームを派遣して会計相談などのプロボノ支援をしてきた。

被災した事業者の目線で、実質的に役立つアウトプットを、短期間集中型で出すことで、地元企業とPwC あらた有限責任監査法人の社員がともに成長した。具体的には経営者の立場に立った事業の将来設計・ライフプランなど含めた総合的な支援により経営力が確実に向上。また商品開発や今後の事業展開なども含めて相談に応じた。

■個人経営者のビジネスパートナーとして
例えば個人経営の飲食業では、最大課題の資金繰りに対し、1.店舗と自宅再建のための資金繰り表の作成、2.会計帳簿を電子化するための操作方法の提示、3.月次の売上と収支のタイムリーな把握、4.将来収支への見通しなどを共有。

小売店では原価管理に会計ソフトを利用し、1.費目の固変分解、原価管理表の作成、2.仕訳起票マニュアル作成、3.月次実績レポートの作成、4.数字による店舗の経営状況の見える化、5.シンプルな日々の仕訳入力、6.月次の経営会議時の利用などを提示。同様に、建設業などにも詳細な提案をしている。

これまでに約25人がプロボノで35社の支援を行った。

個人経営では、資金繰りが最大の課題。会計相談では「人口減少が進む中、借金して店を再建しても大丈夫なのか。将来の設計ができない」と不安を抱く経営者も多く、ビジネスプランとライフプランの両方についても相談に応じた。ビジネスプランとライフプランの両方についても相談に応じた。

支援が終わった後も自立できるよう、エビデンスをもとに目先の資金繰りと、事業を継続するための課題について数字を見て把握し、対応を検討できるようにした。これまで数々の経営支援をしてきた監査法人の強みと言えよう。

とはいえ、ノウハウがあったとしても、個人事業者のニーズは一様ではない。相手の立場に立ち、個人事業者に寄り添い、かつ、事業者が自立できるよう、支援する内容をカスタマイズしていった。数日間かけて行った会計相談後の「この資金繰り表でやっていく自信がついた」という事業者の言葉は、社員にとっても「会計士」の職業観を変える財産となった。

■課題先進地での経験が「人」を育てる
会社の専門性を活かした支援を行う決定が行われた背景には、若手が専門性を発揮する機会の創出が求められていたこともある。

実施にあたっては、復興、社会課題解決の価値、人材育成の価値という視点から、ステークホルダーの合意が得られた。課題先進地である地域での実績を積むことは将来への投資であるととらえたのだ。

東北では自治体や企業、NPOなど様々なステークホルダーと直接触れ合う機会があり、課題解決へのアプローチも難解だが、世界的に求められている複雑化された課題へ対応するためには、これまでとは異なるスキルが必要だ。

実際に、20代から30代の若手社員が中小企業の経営課題解決に直接関わることで、業務への意義・使命感や社会貢献の喜びを実感し、会社に対するロイヤリティ向上、ソフトスキルの成長などの効果につながっている。震災から長い時間が経過したが、いまだに社内で活動を疑う声は上がっていない。

■東北で培ったノウハウを全国へ
PwC あらた有限責任監査法人による東北での支援活動は、岩手県沿岸広域振興局「被災中小企業会計指導事業」、陸前高田商工会 「何でも会計相談」に加え、今年度からは、岩手県県北広域振興局でも相談事業を開始し、沿岸全域に広がっている。

一方でPwCコンサルティングは2015年7月に新製品や新サービス、新ビジネスモデルなどのイノベーションの創出を支援する専門組織「グローバルイノベーションファクトリー(GIF)」を立ち上げた。地方創生ビジネスもその一環に組み込み、地方発のイノベーションを積極的に支援する方針で、東北で培ったノウハウやネットワークを、全国各地で展開するコンサルティングに活用していく考えだ。

東北から全国、そして世界の課題解決へ。PwC Japan グループの挑戦は続く。

※PwC Japanグループは、日本におけるPwCグローバルネットワークのメンバーファームおよびそれらの関連会社(PwCあらた有限責任監査法人、PwCコンサルティング合同会社を含む)の総称

◆いわて三陸復興のかけ橋「復興トピックス」

一般社団法人 RCF
2011年4月、震災復興のための調査を行う団体として発足。現在は復興事業の立案・関係者間の調整を担う「復興コーディネーター」集団として活動。代表理事は藤沢烈。活動例として、2015年度はいわて未来づくり機構を母体とする「いわて三陸 復興のかけ橋プロジェクト」を岩手県より受託し、岩手県内各地と県外企業・団体の復興支援マッチングを推進している。

2016年11月9日(水)12:59

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