記事のポイント
- 富士通の社員有志が「プロボノ部」を立ち上げ、社員の社会参画を進める
- プロボノ活動を通して、SDGsの視点で事業を見直すきっかけに
- 社員の社会感度向上の機会創出で、パーパス経営を推進する
仕事で培ったスキルや経験を活かすボランティア「プロボノ」。富士通の社員有志は2022年5月、「プロボノ部」を立ち上げ、社員の社会参画を進める。認定NPO法人自然再生センター(島根県松江市)とのプロボノ活動では、SDGsの視点で事業を見直すきっかけになったという。なぜ同社は社内外でプロボノを推進するのか。(オルタナ副編集長=吉田広子)
(目次)
■正解のない課題に向き合う面白さ
■プロボノは本業にどう影響を与えるのか
■プロボノは「パーパス経営」の実現にも有効
■正解のない課題に向き合う面白さ
「何か役に立ちたいという思いがあっても、普段の仕事では、なかなか社会課題に携わる機会がない。『正解』のない課題に対して、NPOと同じ目標に向かって協働したことは、貴重な経験だった」
富士通ジャパン・グローバルゲートウェイクラウドアプリケーションDivisionの白井英大さんは、3カ月のプロボノ活動を振り返る。
「NPOは、社会課題の解決を第一の目的にしている。社会課題の解決を目指す志は一緒でも、やはり企業は利益の追求が根底にある。NPOの情熱に直接触れられたことは、本当に良かった。当社の事業や経済の在り方を考え直す機会にもなった」(白井さん)
富士通グループの社員有志5人は2023年1月から4月まで、自然再生センターでプロボノを行った。NPOなどの組織評価を行う日本非営利組織評価センター(JCNE)が両者をつないだ。
参加したのは、デザイナーやシステム開発、AI活用の技術営業など、職種も経歴もばらばらのメンバーだ。今回、一緒に仕事をするのも初めてだったという。
支援先の自然再生センターは、島根県東部の斐伊川最下流に位置する中海(なかうみ)・宍道湖(しんじこ)の自然再生に取り組むNPOだ。
中海・宍道湖は、連結潟湖として、国内最大の汽水湖(淡水と海水が混合する水域)を形成する。戦後の産業発展や湖周辺地域の開発などで、湖の自然浄化機能が低下し、水質が悪化してしまった。
そこで、自然再生推進法に基づき、2006年に設立されたのが、自然再生センターだ。同NPOは、専門家や行政、企業、住民らと連携して、研究・調査や情報発信、環境教育などを実施。自然だけでなく、「かつての湖と人々の親しい関係」まで包括的に再生することを目指す。
■プロボノは本業にどう影響を与えるのか