世界の「緑」がブラジルに集結~緑の党の国際イベント――グローバル・グリーンズ大会2008 レポート

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今本秀爾(エコロ・ジャパン)

去る5月1日~4日の4日間、ブラジルの大都市サンパウロ(ラテン・アメリカ記念センター)のホールで、世界の緑の党大会である「第2回グローバル・グリーンズ大会」が開催された。今回は世界88カ国から緑の党のメンバーや政治家、NGO や環境活動家などが1000人以上集まり、大会会場は連日大勢の参加者で賑わいを見せた。ランチタイムやカフェ・ブレークには豪勢な食事や菓子が用意さ れ、ロビーは展示ブースで埋められた。 また初日のオープニングでは、ブラジルの民族楽器演奏が披露され、参加国すべての代表者がステージに上り、それぞれ自国の言葉でアピールをするなど、お祭 り気分一色となった。

自国のプラカードを掲げてアピールする各国代表(大会初日のオープニング・セレモニーにて)

さらに大会に先駆けて、4月29日~30日には、35歳以下の参加者による「グローバル・ヤング・グリーンズ(Global Young Greens)」の会合が、2007年のナイロビ大会に続いてサンパウロでも開催された。第1日目には、ドイツ緑の党の財団として知られる「ハインリッ ヒ・ベル財団」(Heinrich Boell Foundation)主催の環境フォーラムが大会会場と同じ場所で開催された。さらに大会開催スケジュールの前後を利用し、アフリカ、欧州、アジア太平 洋グリーンズなど、地域ごとのグリーンズの会議が周辺施設にて開催された。

ブラジル大会開催に至る経緯

グローバル・グリーンズ(Global Greens)については、2001年4月にオーストラリアの首都キャンベラで第1回目の世界大会が開催され、70カ国から800人以上の参加者が集ま り、決議文およびグローバル・グリーンズ憲章が採択された。その際に第2回目はアフリカ地域で開催ということが決定され、ケニアの環境NGOであるグリー ンベルト運動がスポンサーを申請、当初は首都ナイロビで開催される予定であった。しかしケニアでは昨年2007年末の総選挙での暴動に見られるような内情 不安を見越して急遽キャンセルとなり、南米でも大きな政治勢力(国会議員13名、州議会議員34名、大臣1名など)を持つブラジル緑の党(Partido Verde)が大会開催運営を引き継ぐ形となり、世界各地域の代表メンバーを含めた実行委員会(Steering Committee)が結成され、今回のサンパウロ大会の実現にこぎつけたものである。 各国・地域の団体および参加者間の交流の他に、今回の大会開催の目的となったのは、気候変動対策を軸とした合意文書「21世紀のための緑のビジョン21」 や「ポスト京都と気候変動」「生物多様性と森林保護」「持続可能な都市」「グローバル・グリーンズの将来」といった課題別の宣言文を採択することであっ た。

世界の緑のVIPたちによる講演

総会(Plenary)での講演の様子

今大会の目玉は、緑の党の著名政治家や世界の各地域を代表する環境活動家やNGO代表による講演のオンパレードであった。とりわけ今回 はプログラムの大半が総会(plenary sessions)に割かれており、用意された7つのテーマごとの報告内容の域を超え、いずれの総会でも各国の緑の党および団体の代表格が自分自身の地域 の環境問題と団体の活動報告に話を集約させていた。 著名政治家では、オーストラリアの連邦上院議員で緑の党のリーダー、環境保護運動家としても名高いボブ・ブラウン(Senator Bob Brown)、レギュラシオン学派の経済学者としても知られるフランス緑の党・欧州議会議員のアラン・リピエッツ(Alain Lipietz)、パリの副市長を務めるデニス・ボパン(Denis Baupin)氏のほか、カナダ、メキシコ、ドイツ、スウェーデン、そしてご当地ブラジル緑の党のリーダー(党首)たちが次々とステージに上がり、自然破 壊や温暖化の影響が深刻化する時代における緑の党の政治的意義を強調するとともに、グローバルな規模での緑のネットワークの発展や結束を呼びかけていた。

アマゾンの森林破壊の現状

今回ホスト国となったブラジル緑の党がアピールしたかったのは、アマゾンの森林破壊問題の深刻な現状である。アマゾンの熱帯雨林は地球の酸素収支の 4分の1を担い、世界最大のCO2吸収源とされているが、現在ブラジル全土のCO2排出量の7割(約1億トン)はこのアマゾンの森林破壊によるものと大会 では報告された。さらにアマゾン地域の森林消失面積は2003年までに約250万ヘクタール(8割強が過去10年間の森林伐採によるもの)と推定され、毎 日100種類以上の生物種が絶滅する計算になり、このままでは2050年までにアマゾン流域の4割の森林が破壊され、世界中のCO2排出量も倍増する計算 になるという。

このような森林破壊の原因をもたらしているのが、近年の国内牛肉消費の拡大にともなう肉牛用牧場の拡大と、主に米国や中国向け輸出用大豆のプラン テーション栽培のための農場拡大である。さらに焼畑による森林消失および火災(山火事)、 製材・製紙用の商業用木材伐採、アマゾン横断道路の建設や5,000を超える鉱山の開発などの複合的要因が挙げられる。

そこでグローバル・グリーンズとしては、アグロ燃料(食物起源のバイオ燃料)の開発制限および違法伐採を阻止するための法的措置の早期導入を図ること、森 林伐採による先住民族などの環境難民の保護を政府や国際機関に呼びかけること、などの内容が提唱された。

充実したワークショップ

会場内ブースに展示されていたバイオ燃料の広告

会場内ブースに展示されていたバイオ燃料の広告

4日間の大会期間中、テーマ別の総会(講演)以外のスケジュールとしては、わずか1.5時間のセッションが2回しか設けられていなかったが、その限 られた時間の中、さまざまな議題で数多くのワークショップが開催され、突っ込んだ議論が行われたのは収穫であった。
「ポスト京都」問題のセッションでは、緑の党の立場として、温室効果ガスの意欲的な排出量削減目標を出すべきだという意見が相次いだ。ただ具体的な削減方 法となると異論が噴出した。手法としてのCDM(クリーン開発メカニズム)については、数字上の操作であり自国の現実的な削減になっていないので宣言文に 盛り込むべきでないというネガティブな意見が出る一方で、経済的なゆとりのない途上国にとっては、先進国によるCDMを最大の排出量削減方法として期待せ ざるをえない、といった反論も出された。同じく実質数字上の操作になるカーボン・オフセットや国内排出量取引制度についても賛否両論があった。(結局宣言 文では「削減技術の発展促進補助手段としてCDMを認めるが、温暖化対策の手段としては認めない」という表記になった)

もうひとつ議論になったのは、アグロ燃料を地球温暖化解決策として認めるかどうかという問題であった。ブラジルは自動車やバスなど、動力燃料の3割 をさとうきび由来のバイオエタノールに依存しており、どこのスタンドに行ってもバイオガソリンが入手できる。ルーラ政権はこれを国の自慢にしているが、他 方でバイオ燃料の増産による熱帯森林の伐採拡大が懸念されている。

「21世紀のための緑のビジョン21」の採択

大会最終日(4日目)の午前中および2日目のワークショップの時間には、上述した各々のテーマ別の宣言文案の検討が行われた。
私が代表を務めているエコロ・ジャパンも、「21世紀のための緑のビジョン21」の提案に構想段階から参画。担当者に対し、主に環境分野での政策提言を 行った結果、「環境難民(environmental refugees) の保護」「先進国が率先してスターン・レビューの勧告内容(世界のGDPの1%を温暖化対策に投資すべき)の政策的導入を果たすこと」「環境税や国内排出 量取引制度の導入」「ポスト京都に向けての高い削減目標設定(2025年までに40%、2050年までに80%)の導入呼びかけ」といった項目を文書に反 映させることに成功した。またこの他「アグロ燃料の普及による悪影響の阻止」「違法伐採の制限ルールの設定」「生物多様性の具体的保護基準の設定」「科学 技術開発における予防原則の徹底」「国連ミレニアム開発目標の達成に向けての努力」といった重要事項が各々のテーマ別宣言文に盛り込まれた。

国際交流イベントかグローバルな政治組織か

しかしながらタイトルのとおり「21項目」にまとめられる予定だったはずの項目が、各国から直前あるいは大会中に多くの追加修正提案が寄せられ、結 局すべてを盛り込んだ110項目からなる提案にまで膨らんでしまった。それはあまりにも膨大だという理由で、第1回大会のホスト国であるオーストラリアの 緑の党からは、もっと絞り込んだシンプルな文書の代案が提案されたが、審議の時間切れなどの理由で結局採用されなかった。
これらの問題の原因は、事前に作業委員会を創設して十分時間を掛けて審議し案件を絞り込む手続きが恐らく間に合わなかったという、開催者側のロジ面での不 備にあるとともに、各国の緑の党大会で通常行われているような、参加国全員による十分な合意文書のための審議時間がほとんど設けられなかったという、プロ グラム企画自体の不備にあるといえる。

また本大会では「21世紀のための緑のビジョン」の他にも、テーマ別の盛りだくさんの合意文書、さ らに50以上の決議案が提出されたが、いずれも大会最終日にほとんど審議もなく時間切れで賛成多数で可決されてしまうといった、通常の国際会議ではありえ ない進行状況の中で「閉会」となった。

これが初めての国際大会であれば、国際交流の場としてのお祭りイベント的興行で乗り切って大成功、といえたかもしれない。しかし今回は第2回目であ るうえ、今大会に至るまでの7年間、「グローバル・グリーンズ」としての目に見える活動が何ら実践できなかったことを反省材料とし、国際会議として何らか の前進を期待すべく開催された大会のはずであった。それだけに、おりしも世界中の緑の党の政治家や党首クラスの代表者が集う場で、本格的な政策論議が行わ れず、「不完全燃焼」に終わったのは残念というほかはない。

閉会セレモニーの様子(大会4日目)

閉会セレモニーの様子(大会4日目)

最後に、今後グローバル・グリーンズの活動を恒常的に展開させるため、事務局(Secretariat)をオーストラリアに置き、担当者を決定する こと、さらに次回(第3回大会)は、5年後(2013年)に欧州のいずれかの都市で実施することが併せて決定された。

ご周知のとおり、世界各国で緑の党は、主に地域や都市レベル、さらに国単位では大きな政治的成功を収め、勢力を拡大しつづけている。しかし欧州緑の 党(EGP)の活動を除き、地域全体や国を超えたレベルでの具体的な連帯活動や国際組織としての緑の党の実績や成果はまだ目に見える形では存在していな い。その意味で「グローバル・グリーンズ」は、果たして常設の国際組織として何をめざし、何ができるのか、その存在意義は依然不明瞭なままであり、偏にそ の今後の展開如何に懸かっているといえるだろう。

■筆者紹介

筆者(会場玄関前にて)

筆者(会場玄関前にて)

今本 秀爾 (いまもと しゅうじ)

著述家、国際ジャーナリスト、哲学研究者。
ドイツの現代哲学・思想の研究から環境運動に関心を広げ、2001年にオーストラリアで開催された「世界緑の党大会(グローバル・グリーンズ世界大会)」 に参加以来、世界55カ国、400名以上の緑の党員、政治家たちと交流を続け、日本における緑の党のトップ・コーディネーター役を務めてきた。欧米の緑の 党の政策をベースとした日本初の「持続可能な社会のためのグリーン・マニフェスト」を完成させるため、2004年1月に東京でNPO「エコロ・ジャパ ン」(http://lp.jiyu.net/ecolo.htm) を結成、代表を務める。海外の緑の党関連の論客やゲストの招聘、セミナー開催、訳本の刊行など活動のほか、2007年の参院選時には「グリーン・マニフェ スト・キャンペーン」を実施した。
主要著書に『リベラル・パワー 日本病理社会・再生の条件』(郁朋社)、共著に『欠陥議員』 『国会議員の成績表』(以上 創芸出版)、『21世紀への思想』(北樹出版)。 監訳書に『未来は緑――ドイツ緑の党新綱領』、ユルゲン・トリッティン著 『グローバルな正義を求めて』(以上 緑風出版)など。

2008年6月13日(金)21:08

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