COP10で韓国のダム16基計画撤回訴え

【写真】名古屋市COP10交流フェアKFEMブース会場にて。左から二番目が馬さん

漢江(ハンガン)など韓国の四大河川に計画している合計16基のダム事業は撤回を――。名古屋で開かれた生物多様性条約第10回締約国会議(COP10)の会場で、韓国屈指のNGO「韓国環境運動連合」(KFEM)がCOP10の参加者を前に問題提起した。

この事業は、治水・利水の目的で、四大河川、漢江(ハンガン)、錦江(クムガン)、洛東江(ナクトンガン)、栄山江(ヨンサンガン)に計16基のダムを建設し、本流を5.7億立米分浚渫するという巨大計画だ。李明博大統領が2007年の大統領戦で公約に掲げ、就任後、国民の不評を受け、2008年4月に一旦は断念した。

KFEMの自然保護チームディレクター馬龍雲(マ・ヨンウン)さんは、「李大統領は経済発展を期待されて選ばれたが、世論調査ではこの事業に国民の7割が反対している」と説明する。

ところが、断念からわずか2カ月後の6月に事業計画が再開。同年11月には環境影響評価を終わらせた。「李大統領は『ミスター・ブルドーザー』と呼ばれている。当初予算も13.9 兆ウォンだったのが、たった2ヶ月後の再開時に22.2兆ウォンに増大した」(馬さん)。

農家は川沿いの土地を買収され、キムチの材料である白菜の値段が一時高騰。ラムサール条約に登録された湿地や渡り鳥への影響も多大」という(馬さん)。

【図】韓国の四大河川開発事業(提供:KFEM)

韓国は2008年にラムサール条約のホスト国になった。同10月の開会式で、李大統領は『条約の模範的な国家になる』と宣言をしたにもかかわらず、そのわずか40日後に一転、最終的な事業実施を決めた。

馬さんは「当局は水不足だと言うが、4大河川周辺には渇水はない。洪水は韓国の東海岸では問題ですが、4大河川周辺ではあまりない」と中止すべき理由を訴えた。「韓国メディアは保守的であまり報道してこなかった。問題が顕在化して気づき始め、ようやくこの事業に異議を唱える自治体首長も現れた」。

日本からは草の根グループ「ラムサール・ネットワーク日本」が今年7月、李政権に対して、工事中断と環境保護団体や地域住民との対話を求める声明を出している。

「より多くの日本の皆さんに知ってもらいたい。事業の中止に向けて協力をお願いします」と馬さんは来日メンバー3人と共に会場で呼びかけていた。(まさのあつこ ジャーナリスト)

※記事中、委大統領との記述がございました。李大統領に訂正しお詫び申し上げます。(2010/11/16 オルタナ編集部)

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オルタナ編集部

サステナブル・ビジネス・マガジン「オルタナ」は2007年創刊。重点取材分野は、環境/CSR/サステナビリティ自然エネルギー/第一次産業/ソーシャルイノベーション/エシカル消費などです。サステナ経営検定やサステナビリティ部員塾も主宰しています。

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