容器の省資源化で プラごみ削減へ――サラヤ

大量のプラスチックごみが海に流出し、海の生態系に影響を与えている。なかでも多いのが、プラスチックの包装容器だ。サラヤは1952年の創業時から容器の省資源化にこだわり、環境負荷低減に努めてきた。それらを支えるのは、調達・研究・デザインが一体となった「オールサラヤ」の取り組みだ。(オルタナ副編集長・吉田 広子)

「ヤシノミ洗剤」と詰め替えパック㊨と「ヤシノミ洗剤プレミアムパワー」と付け替え用のパウチ

サラヤは創業時から、人や環境への影響を考え、天然素材を用いた商品づくりと同時に、容器の省資源化を進めてきた。

戦後、赤痢などの感染症が流行するなか、サラヤはヤシの油を原料とした石けんに殺菌成分を配合し、日本初の薬用石けん液と専用容器を開発。固形石けんよりも清潔に保てるため、学校や工場など集団生活の場を中心に一気に広がった。

この石けん液は7─ 10 倍に希釈して使えるため、持ち運びの労力や輸送費、容器、保管スペースなどを削減できる画期的な商品であった。

「創業者である更家章太は、三重県の林業を営む家で生まれ、熊野の豊かな自然に囲まれて育った。事業を興してからも、常に自然との共生や汚れのない『清流』のような経営を目指していた。このDNAはいまもサラヤに受け継がれている」(サラヤ広報宣伝統括部の廣岡竜也統括部長)

業界初の「詰め替え」洗剤

サラヤは1971年、業界に先駆けて環境負荷が低い植物系食器用洗剤「ヤシノミ洗剤」を発売。1979年には家庭用を発売したが、当時の食器用洗剤のボトルは使い捨てで、膨大な石油資源を浪費し、ごみ増加の原因にもなっていた。

そこで、サラヤは独自に容器の研究開発を進め、1982年に食器用洗剤で初となるスタンディングパウチの「詰め替えパック」を発売した。

廣岡統括部長は「詰め替えパックの販売はヤシノミ洗剤のボトルデザインにも大きな影響を与えた。それは台所に置かれる容器が、商品名が大きく入った商業主義的デザインでは永く使ってもらえないということ。そこでメーカーにとって大切なブランド名を小さくし、ステンドグラス風のデザインにしてインテリア性を高めた」と振り返る。

その後も省資源化を図るとともに、洗剤を移し替える手間やインテリア性など、あらゆる角度から詰め替えパックの進化形を考えた。

その結果生まれたのが、「ヤシノミ洗剤プレミアムパワー」(2016年発売)だ。従来の洗剤を「詰め替える」のではなく、パウチを「付け替える」仕組みだ。衛生的で無駄がなく、洗練されたデザイン性が評価され、「グッドデザイン賞」を受賞した。

包装と容器が一体に
家庭用洗剤で知られるサラヤだが、売り上げの多くを占めるのが業務用。例えばユーザーと契約して必要な薬剤をドラムで提供し、使用後に引き取り洗浄して再提供する。そうすることで、容器もごみも減らすなど、その取り組みを業務用製品にも広げている。その他にも、「事業所から排出されるごみの容量を減らしてほしい」という現場の声を受け、容器改良に着手。折りたたんで捨てられるようにすることで、ごみの容積率を約 70 %削減。容器の厚みを薄くすることで従来のボトルに比べ約 50 %のプラスチック使用量削減にも成功した。

ごみ減量と資源の有効利用を促進するため、「B.I.B(バッグ・イン・ボックス)システム」への切り替えも進める。

ごみ減量と資源の有効利用を促進する「バッグ・イン・ボックス システム」。段ボールに入れることで、プラスチックの使用量を 最小限に抑え、積み重ねやすくなる

バッグ・イン・ボックスシステムとは、包材と容器が一体になったパッケージ。段ボールに薬剤の入った内袋(ポリエチレン製)が入っており、その内袋に専用コック(弁)を取り付けると、そのまま使用できる。使用後は内袋と段ボールを分別し、段ボールは紙のリサイクルシステムに、プラスチックは適正に処理される。

こうした一連の取り組みが評価され、サラヤは日本環境協会が主催する「エコマークアワード2015」で最高賞となる金賞を受賞した。

デザイン哲学に「環境」
石油原料を減らす努力を続けてきたサラヤだが、衛生用品を扱う以上、単に容器を薄くすれば良いわけではない。薬剤の成分に影響が出ないように耐薬品性は優れているか、運送に耐えうる十分な強度があるか、さまざまな観点で検証する必要がある。

それらを支えているのが「オールサラヤ」の体制だ。サラヤは原料の調達から研究開発、デザインまでを一貫して自社で行う。全社で「サステナビリティ(持続可能性)」という大事な価値観を共有し、より良い製品化に向けて連携を進める。

6つのデザインフィロソフィーには「人を思いやること」「楽しくあること」などのほか、「地球環境を尊重すること」を定めた。

廣岡統括部長は「石油資源の使用をできるだけおさえるとともに、ごみを減らし、環境に配慮することは、創業時から一貫している。気候変動や海洋プラスチックごみ問題が深刻化するなか、サラヤができることをさらに進めていきたい」と力を込めた。

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室井 孝之 (オルタナ総研フェロー)

42年勤務したアミノ酸・食品メーカーでは、CSR・人事・労務・総務・監査・物流・広報・法人運営などに従事。CSRでは、組織浸透、DJSIなどのESG投資指標や東北復興応援を担当した。2014年、日本食品業界初のダウ・ジョーンズ・ワールド・インデックス選定時にはプロジェクト・リーダーを務めた。2017年12月から現職。オルタナ総研では、サステナビリティ全般のコンサルティングを担当。オルタナ・オンラインへの提稿にも努めている。執筆記事一覧

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