サステナビリティ人材の育成と経営教育

企業と社会フォーラム(JFBS)第9回年次大会 サステナビリティ人材の育成と経営教育

学会「企業と社会フォーラム」(JFBS)は、2019年9月5~6日、「サステナビリティ人材の育成と経営教育」を統一テーマとする第9回年次大会を早稲田大学で開催しました(協力:B Corp Asia)。

本大会のセッションの中から、今回は企画セッション2「Sustainability Leadership Training」における報告・議論内容をご紹介します。本セッションでは、日本経済団体連合会(以下、経団連)、慶應義塾大学ビジネススクール、(中国でCSR人材育成プログラムを展開する)GoldenBee Corporate Social Responsibility Consultingによるサステナビリティ人材育成の取り組みが紹介されたのち、ディスカッションがなされました。

■サステナビリティ人材をいかに育成するか

最初に長谷川知子氏(経団連SDGs本部 本部長)より、企業がいかにサステナビリティ人材を育成しているか、経団連による取り組みを通じて紹介がなされました。

経団連は、政府が第5期科学技術基本計画(2016年1月)においてはじめて示した「Society 5.0」という概念について、そのコンセプト作りから議論に参加し提言活動を進めてきました。「Society 5.0」は、狩猟社会(Society1.0)、農耕社会(Society2.0)、工業社会(Society3.0)、情報社会(Society4.0)に続く、人類社会発展の歴史における5番目の新しい社会「創造社会」です。

サイバー空間(仮想空間)とフィジカル空間(現実空間)を高度に融合させたシステムにより、経済発展と社会的課題の解決を両立する、人間中心の社会(超スマート社会)であり、デジタル技術を活用して社会的課題を解決するために人間のイマジネーションと創造性が求められます。

たとえば途上国でのオンライン教育や農業にIoTを活用するなど、SDGs(Sustainable Development Goals)と目指す方向性は同じであると説明されました。

このSociety 5.0を具体化するには企業トップのイニシアティブによりサステナビリティを中長期的企業戦略に組み込んでいくことが必要との理解のもと、2017年11月、経団連は企業行動憲章の改訂を行いました。改訂のポイントとしてたとえば、全10原則のうち、人権に関する原則4は国連「ビジネスと人権に関する指導原則」を踏まえてこの度初めて独立した原則になったことが挙げられます。

改訂版企業行動原則の実施状況を2018年3~6月に調査したところ、回答率は22%ながら、そのうち70%の企業が何らかのSDGsへの取り組みをしていることが明らかになったということです。

またSDGs達成のために加盟企業がどのような取り組みを行っているか調査を行い、事例集(ウエブサイト)が作成されました。このほか企業市民協議会(CBCC: Council for Better Corporate Citizenship)や経済広報センターなどの経団連関連組織でも、メンバー企業のCSR促進、CSRヨーロッパやBSR(Business for Social Responsibility)などのグローバル組織とのネットワークづくり、大学での講義などの取り組みを進めているということが報告されました。

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齊藤 紀子(企業と社会フォーラム事務局)

原子力分野の国際基準等策定機関、外資系教育機関などを経て、ソーシャル・ビジネスやCSR 活動の支援・普及啓発業務に従事したのち、現職。一橋大学大学院社会学研究科修士課程修了、千葉商科大学人間社会学部准教授。

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