記事のポイント
- SBTに参加する国内企業が1000社を超え、大企業の動向を環境NGOが分析した
- GHG排出量の多い鉄鋼や紙パルプ、金融セクターの遅れが顕著に
- 「セクター別ガイダンス」の活用などで、業種を問わず速やかな脱炭素を
脱炭素の国際的イニシアティブ「SBT」の認定を取得・コミットした国内企業が、3月に1000社を超えた。これを受け、WWFジャパンが大企業225社の動向を分析した結果、通信・電気機器など技術セクターの取得・コミット率が7割超に。一方で、温室効果ガス(GHG)排出量の多い鉄鋼や紙パルプ、金融の参加は0〜1社にとどまった。セクター間格差の解消や、実効性ある削減をどう実現すべきか。分析を行なった担当者に聞いた。(オルタナ副編集長・長濱慎)
SBT(Science Based Target)とは、パリ協定が求める水準(世界の平均気温上昇を産業革命以前から1.5℃に抑える)と整合した、企業のGHG排出量削減目標。認定機関のSBTiは、 CDP、国連グローバルコンパクト(UNGC)、世界資源研究所(WRI)、世界自然保護基金(WWF)の4機関が共同で運営する
■中小企業の参加が世界トップの伸びを牽引
――国内企業のSBT参加が1000社を超えました。英国、北米と並ぶ多さです。
羽賀:SBTの参加企業数は、日本に限らず海外でも伸びています(SBTiダッシュボード上で4月5日現在8275社)。2015年の設立から9年が経ち、その存在が認知されてきた証ではないでしょうか。SBT認定の取得・コミット(※)数が最も多いのは英国ですが、伸び率は日本が一番で2023年5月から1年足らずで倍増しました。
※SBTに参加する企業はSBTiにコミットメントレターを送り、それから2年以内に目標を設定、認定を取得する
海外子会社が日本の親会社にSBTへの参加を求めるケースや、サプライヤーを構成する中小企業が大企業の求めで参加するケースも増えています。WWFジャパンは定期的にSBTの参加企業数を更新しており、1週間に20社ぐらいのペースで伸びています。その多くが中小企業です。
環境省による補助金などの支援事業も、高い伸びを後押ししていると思います。やはり政府のバックアップは重要です。隣の韓国ではSBTへの参加がそれほど進んでいませんが(4月5日現在68社)、補助がないことも関係しているのではないでしょうか。
■日経平均構成企業225社の半数が「不参加」
■スコープ3の算定と「関心の低さ」がネックに
■削減が困難な業種には「セクター別ガイダンス」