「昨今の日本でのESGを考慮した投資家の投資行動が原因で、今までにない株価の動きがみられる。」「(一方、)気候変動は数百年後に起きるかどうかも分からない事象なので、扱いが難しい。」
昨年、ある取材を受ける中、取材者にこのように言われ、内心苦笑した。多くの水害を引き起こした西日本台風が訪れた直後だったので尚更だ。
「ESG投資」という中には気候変動も含まれているはずだが、ESGを構成する実態のある個別要素ではなく、今この瞬間の数字として表れる情報のみを信じることに慣れてしまっている、或いはそれが役割だと信じているために出てくる発言だろう。
これは一例に過ぎないが、運用、証券、企業IR、銀行、年金基金、経済記者など、金融に関わる全ての人々が直面している現実のジレンマの表れだろう。
確かに、気候変動は「強制労働」等の課題に比べて、加害者と被害者を一対一の関係で綺麗に結びつけることが出来ないため、掴みづらいところがあるだろう。
世界中の気候変動に関連した政策や取組みの軸としてIPCC(気候変動に関する政府間パネル)の報告書が利用されるが、第5次報告書作成にあたった831名の各国を代表する科学者の知恵を持ってしても、各事象において「非常に可能性が高い」、「やや可能性が高い」等の確率論で語らなければならない程、複雑な課題だ。
しかし、今この瞬間に株価に反映されていないから、複雑で分かりづらいから、という理由で気候変動を軽視して良いのだろうか。
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