シンガポール、感染の6割が外国人労働者

シンガポールの新型コロナウイルス感染者のうち、外国人労働者が6割を占めると地元紙が報じた。中でも、低所得の外国人労働者が住む寮が集団クラスターとして問題視されており、シンガポール全土の感染者数4427人(4月16日時点)のうち2689人が外国人労働者だという。シンガポールは、これまで感染症対策封じ込めで評価されていたが、新たな局面を迎えた。(寺町幸枝)

シンガポールの経済成長を支える外国人労働者たち©︎Jnzl’sPhoto

シンガポールのザ・ストレーツ・タイムズ紙によると、シンガポールでは、約32万人の外国人労働者が寮生活をしており、現時点でそのうち新型コロナウイルスを発症した人の数は1%に満たない。

だが、今回集団クラスターを起こした「S11」は、「労働者向けのシンガポールで最も家賃が安い寮」として知られていた寮で、1カ所で979人という感染者を出し、その数は感染した外国人労働者全体の3分の1に当たる。

感染が一気に広まった大きな原因は、小さな扇風機があるだけの部屋に、12-20人が2段ベッドで相部屋生活をしている上、フロアーで数百人が共同のトイレやシャワー施設を利用するという環境ゆえだ。さらに、国家開発省のローレンス・ウォン氏によると、多くの労働者は症状が軽度の場合、仕事をし続けていたという。

外国人労働者の人権問題に取り組むシンガポールのNPO団体「トランジェント・ワーカーズ・カウント・ツー(TWC2)」は、こうした基本的生活環境が劣悪な状態の外国人労働者の間に、新型コロナウイルスの集団感染リスクが高いことを早くから訴えていたが、政府の対策もままならない状態で、集団感染が発生してしまった。

現在、シンガポール政府は、こうした外国人労働者の寮がある地域に医療前哨基地を幾つも設置し、同時にロックダウン期間の給与を補償すると宣言した。中でも、シンガポールにある43の寮の内、12の寮を「隔離ゾーン」と指定し、人々の出入りを厳しく制限している。

労働者は部屋からできるだけ出ないように指示され、軍の部隊が出動して、食事を各部屋に配布しているという。また寮内では継続的に、ウイルス検査が行われている。

だが、こうした制限は、外国人労働者たちの生活環境をより悲惨なものにしている。彼らの多くは、携帯で母国に住む家族と話しをするか、本を読むことしかできないと、サウスチャイナモーニングポストは報じている。

さらに、サウスチャイナモーニングポストは「シンガポールの経済的な急成長を支える需要な労働力である外国人労働者に対して、多くのシンガポール人はひどい扱いをしてきた」と指摘する。この問題は、シンガポールに限らず、国境を超えた労働者が行き交う現代では、どの国で起きてもおかしくない。

キーワード: #新型コロナ

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