「品切れ報道が品切れを呼ぶ」とメディア専門家

新型コロナウイルスの影響で、マスクや消毒液だけでなく、ティッシュやトイレットペーパーなど日用品の品切れも相次いだ。その背景には、デマと分かっていても買いに行ってしまう消費者心理がありそうだ。「品切れ報道が品切れを呼ぶ」とする専門家の見方もある。品切れに対するSNSの反応状況について、SNS情報などをAIで取集・分析してニュース配信を行っているJX通信社(東京・千代田)の米重克洋社長に、見解を聞いた。(村松正彦)

JX通信社は新型コロナウイルスのリアルタイム情報(写真左)など、AIを活用して収集・分析した情報を即時提供している(写真提供:JX通信社)

――2月末のトイレットペーパーの品切れに端を発した、一部商品の品薄状態が現在も続いています。この発端はデマが影響という見方もありましたが、本当でしょうか?

米重社長: デマ自体が原因ではなく、「品不足というデマが流れた」というメディア報道によって、品不足が加速した可能性が高い、と見ています。

デマとされたツイートが2月27日に幾つか投稿されています。そのうちの1つを我々が調べたところ、最初の投稿から2時間で5回リツイートされた程度でした。これだと全国でトイレットペーパーが品切れにはならないので、「デマ自体によって品不足になった」のではなく、「『デマのため、一部のスーパーではトイレットペーパーが品薄になっている』という報道を見て、デマと分かっている人たちも買いに走った」と理解しています。

――マスク不足が続いていますが、これについてのSNSの状況はいかがですか?

私たちは「ソーシャル防災」を掲げ、SNS情報を使った危機管理をしており、マスクに関するSNS投稿も集めています。それを見ると、3月から4月の段階では、「マスクを入手するために、朝の開店前から凄く行列がある」といった投稿が、毎日出ていました。ここ最近になって、ようやく少し手に入りやすくなってきた状況があるようです。

――デマ拡散についての、最近の傾向はどうなっていますか?

デマが広がるのは、LINEのグループなどクローズド型のSNSが多いようです。これがtwitterとかに出てくると、オープン型のプラットフォームなので検証が進み、「それは違うのではないか」とか、「それはデマだ」というツッコミが入りやすいです。そこがtwitterとLINEの大きな違いだと思っています。

最近のデマは、クローズド型のSNSなど我々の目に見えにくいところで広がりがち、と言えると思います。

――公式な情報の状況はどうなっていますか?

「ある施設でクラスタが発生した」という時に、そこには近いが関係のない施設も「感染者が出たらしい」と噂され、それがSNSにも書かれるというケースが結構あります。私たちはその対策として、企業・自治体・国による感染事例の公式情報を集めてオンラインの地図に載せ、自社アプリや他社のニュースアプリなどを通じて公開しています。LINEに関しても、同アプリ内のニュースページへの情報提供を始めました。

「行政などが正しい情報を発信している」と言っても、市民にとってはそれが必ずしも見やすいものではない。「正しいけれど見やすくない情報」を、見やすくして伝えるのはメディアの役割だと思いますので、パブリックで正しい情報に一般市民がアクセスできるような状況を我々がしっかり作ることを、意識してやっています。

米重克洋(よねしげ・かつひろ)

株式会社JX通信社代表取締役社長、CEO、報道研究者。1988年8月、山口県生まれ。2007年、私立聖光学院高等学校(横浜市)卒業後、学習院大学経済学部に進学。2008年1月に同社設立。中学・高校時代に航空業界専門のニュースサイトを運営した経験から「ビジネスとジャーナリズムの両立」という課題に着目。

2020年5月21日(木)9:00

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