「未来に何を遺すか」葬送のカタチ提案するブランド

環境に配慮した葬式で次の世代へのバトンを――。国産間伐材を使用した棺や有機野菜の食事、NPOへの寄付金付きプランなどを用意し、故人や家族一人ひとりの思いにこだわる葬儀ブランドがある。「ナチュラル×フューネラル」が提案する新しい葬送のカタチとは何か、また新型コロナウイルスの対策のなかでどのような知恵や試みが求められているのか、ブランドを運営するフォーバトン(東京・港)の坂本健代表に話を聞いた。(堀理雄)

「ナチュラル×フューネラル」は、一人ひとりの思いによりそったお葬式をサポートしている(写真提供:フォーバトン社。以下同)

「ジェンダーや家族のあり方など社会の大きな変化のなかで、葬儀のあり方も新しい価値観でとらえ直すべき。私たちの未来のお葬式について、事業者や地域社会も一緒になって考え、提案していきたい」

こう話す坂本さんは、以前有機農業関係の活動に関わった経験があり、社会的事業(ソーシャルビジネス)に関心を持って葬儀事業に携わるなか、2015年ごろから新たな葬儀ブランドの活動を始めた。

「ナチュラル×フューネラル」の葬儀プランは、寝台車や祭壇、司会進行などの基本セットに加え、棺、骨壺、生花、返礼品、料理のそれぞれを顧客が選択肢から選ぶ仕組みだ。

例えば棺は、ウィルライフ社と森林保護団体more treesが開発した「エコフィン」を採用。約半分に抑えた資材は国産の間伐材を使用し、燃焼時のCO2排出も削減した。返礼品の一つ「はぁもにぃ養蜂部のはちみつ」は、障がいを持った子どもたちの手で生産された完熟生はちみつだ。

環境にやさしい棺「エコフィン」は、一般の棺の約半分の資材でつくられている。製品の一つ「Will」で使われているヒノキは、more treesの森がある高知県の四万十川流域の間伐材を使用している

葬儀プランの基本セットには、社会課題に取り組むNPOなどへの寄付金が含まれている。「森里海の環境基金」を通じ、子どものフリースクールを経営する団体や環境保護NPOなどへ、顧客の名前で支援金が寄付される仕組み。これまでに累計200万円の寄付を行った。

「地域のNPO活動などを支えたい」と話すフォーバトンの坂本健代表

坂本さんは「公的な手が届かない部分を担うNPOなど地域の社会活動を支えることで、葬儀を通じて地域に持続可能な循環が生まれれば」と話す。

一方業界の現状についての問題意識もある。一部の仲介業者(ブローカー)が低価格で葬儀を受注し、仲介料を中抜きして個々の葬儀社に丸投げするような実態もあるという。「葬儀ブランドと提携葬儀社が、例えばセミナー開催などを通じて地域に根差したファンを増やし、地域社会のなかでお互いに育っていける環境づくりが大事だ」と強調する。

現在「ナチュラル×フューネラル」は関東甲信越地域を中心に、10社以上の葬儀社の提携に向け準備を進めているという。

■新型コロナ対策「遺族の立場で」

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オルタナ編集部

サステナブル・ビジネス・マガジン「オルタナ」は2007年創刊。重点取材分野は、環境/CSR/サステナビリティ自然エネルギー/第一次産業/ソーシャルイノベーション/エシカル消費などです。サステナ経営検定やサステナビリティ部員塾も主宰しています。

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