「日本は自然エネルギーのリーダーに」

マーク・ガーゾン氏

国連、米下院、世界中の民間組織などで調整役として活動するマーク・ガーゾン氏(米国・メディエーターズ財団代表)が来日した。中国の台頭などから、国際社会の中での日本の位置づけが後退する中、震災と原発事故がそれに拍車をかけようとしている。いま日本に求められる国際的役割とは何かを聞いた。(聞き手=形山 昌由)

-震災後、多くの在日外国人が国外脱出してる。なぜ、いま日本に来たのか。

私は何らかの危機を抱えているたくさんの国で働いてきた。危機が訪れたとき、その国はよい方向へ変革できるチャンスでもある。私のメッセージが日本の変革に役立てればと考え、来日した。

-ガーゾンさんは、著作(世界で生きる力、英治出版)のなかでグローバルシチズン、もしくはグローバルインテリジェンスという言葉を使っている。それが求められている理由は。

世の中には解決できない問題があふれていて、こうした物事に対応するためには、既存のインテリジェンス以外にグローバルな視点が必要。他の国、そこで暮らす人々を理解するためには、グローバルなインテリジェンスを持つことがとても大切だ。

-世界には5種類の市民がいるとも述べている。

最初の段階は、自らの関心事にしか注意を向けない1.0。次に自分たちグループのことを考える2.0、そして社会や国家全体に共感できるナショナリズム型の3.0と上がっていく。いまの社会にはこの段階の市民が多いが、これからはここから先を目指さなくてはいけない。現在、急速に増えているのが4.0に位置づけられる人々で、異文化体験を持ち、ナショナリズムにとらわれない考えを持つ層。そして最終的には、すべての生命や地球を視野に入れた思考や行動ができる5.0へと進化する。いま社会で求められているのは、4から5の段階の人々だ。

-進化した市民の存在は、企業の社会的責任のあり方にもつながってくるのか。

そうだ。自国の環境保護には熱心だが、他国は汚しても全く気にしない企業も多い。こうした環境植民地主義とでもいうべき現象は、5.0の市民として行動すればそもそも起こりえない。言葉を変えれば、あなたたちの原発の問題は私たちの問題でもあるとの意識が必要だ。

-今後、日本がグローバルリーダーになるにはどうすればよいか。

例えば日本にはエネルギーがないといわれているが、高い技術力を活用すれば安全、安定的に自然エネルギーを生み出すことができ、その分野で世界のリーダーになれる。それには国家戦略が必要。石油に依存しない、危険な原発を使わないという強い意思を表明することだ。ケネディは、米国は10年で月に人類を送ると宣言し、それを実行して宇宙開発のトップに立った。まずトップが宣言し、それに向かって目標を達成すれば、日本は世界のリーダーになれる。

(プロフィル)

マーク・ガーゾン

グローバル・シチズンシップを躍進させた多数の活動に仲介役、リーダーシップトレーナーとしてかかわる。ケニアやネパールでの紛争解決プロジェクトにも従事。Leading Through Conflictを始めとする著作も多く、150万部を発行した「国際新聞」、「ワールドペーパー」の創刊にもジャーナリストとして参加した。

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オルタナ編集部

サステナブル・ビジネス・マガジン「オルタナ」は2007年創刊。重点取材分野は、環境/CSR/サステナビリティ自然エネルギー/第一次産業/ソーシャルイノベーション/エシカル消費などです。サステナ経営検定やサステナビリティ部員塾も主宰しています。

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