共通価値の創造(Creating Shared Value:CSV)とは、ハーバード大学マイケルポーター教授等が2011年1月に提示した概念で、2011年10月に公表された欧州新CSR戦略にも取り上げられた。
CSVとは、「社会問題を企業の事業戦略と一体のものとして扱い、企業のもつスキル・人脈・専門知識などを提供しつつ、事業活動として利益を得ながら、社会問題を解決、企業と社会双方がその事業により共通の価値を生み出す」というものだ。CSVとして新たに概念が提示されてからほぼ1年が経過するが、その後の企業の取り組みはどうだろうか。
世界でCSVを牽引しているのは、ネスレ、GE、コカコーラ、シスコのような欧米のグローバル企業が中心だ。最近では、中南米の企業のCSVへの取り組みが活発になってきている。
ネスレは、共通価値の創造チーム(Creating Shared Value Team)を社内に持っており、「栄養」「水資源」「農業・地域開発」の3分野に的を絞って、世界各地で大小様々なCSVプロジェクトを実施している。
CSVを実践していくには、企業の中で、
① 製品と市場の見直し
② 自社のバリューチェーンの生産性の再定義
③ その企業が拠点を置く地域を支援する産業クラスターの形成
――という3つの点が必要になる。
CSVを難しい概念とはとらえずに、まずは小さなことからプロジェクトを実施してみてはどうだろうか。 自社がもつ強みを活かして、地域の社会的問題のうち、解決できるものはないかを検討し、社内にその新規事業をプロジェクトとして立ち上げるのだ。
これは、社内で社会起業家(ソーシャル・イントラプレナー)を立ち上げていく作業になる。これにより、企業としては長期的な視点で、より持続可能な競争上のポジションを作り上げる足掛かりができる。
見せかけのCSRから脱却し、戦略的CSRであるCSVを実践することで、日本企業が経済的成功と持続可能な社会の構築を推進し世界を牽引するようになって欲しい。
(在ロンドンCSRコンサルタント・下田屋毅)