CSRを取締役に持ち込む方法――下田屋毅の欧州CSR最前線(34)

在ロンドンCSRコンサルタントの下田屋毅氏

プランAは2007年に立ち上げられた英国の老舗スーパーマーケットのマークス&スペンサー(M&S)のCSR戦略であり、ビジネスケースである。筆者は、10月6日・7日とロンドンにて開催されたエシカルコーポレーション主催のサプライチェーンサミットに参加する機会を得た。そこでM&SプランA部長のマイク・バリー氏に、CSR戦略であるプランAを取締役会にビジネスケースとして持ち込むにあたっての「10の考え」お聞きしたのでそれを紹介したい。(在ロンドンCSRコンサルタント・下田屋毅)

1、競合他社のベンチマーク:取締役会は、競合他社が何をしているのか動向を気にしている。競合他社(小売業者、センズベリー、テスコ、ウォールマート)及び関連企業(ユニリーバ、コカコーラ P&G)、また、直接競合ではないが、セクターを超えてみておく必要がある企業(例、鉱山、石油、自動車産業、など)の動向をベンチマークし、競争に勝てる活動として取締役会にアピールする。

2、戦略的リスク:サプライチェーンリスクなどビジネス戦略上のリスクを取締役に伝える。また、顧客のコストについての偏見などで顧客エンゲージメントができない場合など、将来に向けた障害許容力が必要となる。取締役に対しては、とにかく戦略的な言語での使用を心がける。

3、自信を持つ:ビジネスリーダーとして組織の中で、商業上での必要性を訴える。

4、ベネフィットの測定:取締役がサステナビリティに関する利益・恩恵がわかるように測定し伝える。

5、経営管理体制を整備する:サステナビリティをビジネスに統合して実施しなければならないことを組織の中で構築してく。M&SのプランAを、事業構造に組み込み、取締役会が管理をコントロールできるようにする。

6、サステナビリティを戦略として組織全体に統合:海外支店やオンラインビジネスも含め、商業的な幅に合わせてサステナビリティをビジネス戦略として統合する。

7、柔軟性:目まぐるしく変化する世界に、柔軟に対応する。

8、取締役の責任:取締役はプランAについて責任を持ち、サステナビリティの枠を超えて、幅広くビジネスの利益が受けられるものとして遂行する。

9、三角アプローチ:競合他社の動向を伝えるなど、取締役に絶えず組織を超えた外のサステナビリティに関連するポイントを意識させる。トップや取締役は、一つの声だけでは動かない。ビジネスリーダーが集まる国際的な会議などで他からの声を聞くことにより、サステナビリティに関する危機感や機会があることを感じ行動を起こす。

10、エキサイトできるものとする:サステナビリティに関してのディスカッションでは、リスク回避、障害許容力や企業はしなければならないことなどネガティブな表現がとても多い。ポジティブな表現、イノベーション、将来の収益源になるもの、顧客が喜ぶものなど、プラン A を実施する際にエキサイトできるものにするエキサイトできるものとして実施する。

shimotaya_takeshi

下田屋 毅(CSRコンサルタント)

欧州と日本のCSR/サステナビリティの架け橋となるべく活動を行っている。サステイナビジョン代表取締役。一般社団法人ASSC(アスク)代表理事。一般社団法人日本サステイナブル・レストラン協会代表理事。英国イーストアングリア大学環境科学修士、ランカスター大学MBA。執筆記事一覧

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