記事のポイント
- 企業が文化活動などを支援するメセナ活動はバブル崩壊を機に縮小したのか
- 本来、メセナ活動は「新しい価値を創造する」ための取り組みだった
- 新たな市場を開拓するためには、戦略的なメセナ活動への回帰が近道だ
日本社会における企業メセナ活動の歴史を振り返ると、1980年代後半から90年代にかけて隆盛を誇り、バブルの崩壊と共にシュリンクしてしまったという印象を持っている方が大半ではないだろうか。これはまぎれもない事実なのだが、では、それまで約10年にわたって企業が取り組んできたメセナ活動自体の価値もバブルと共に棄損してしまったと言えるだろうか。今回はそんな視点をみなさんとあらためて共有したい。(オルタナ総研所長=町井則雄)
メセナ活動は、定量的に効果を計測することが難しい領域が多い。そのため、短期的な視点でその効果・成果を測定しようとすると可視化することができない。「なぜわが社はその活動に取り組むのか」という点で社内あるいは社外に対して納得してもらえる説明が難しいことが課題の一つでもある。企業のメセナ担当者はこの点でずっと苦労されてきたと思う。
そのような事情から、企業の業績が良く余裕がある時には、価値が可視化されていなかったとしても余白的に活動が許されるという状態が続く。しかし、いったん業績が悪化した場合には、コストカットの最初のターゲットになりやすい事業となってしまう。
これは、企業によるメセナ活動として致命的とも言える脆弱性であって、その意味でもメセナ活動もまた「失われた30年」となってきたと言えるかもしれない。
■メセナ活動は単なる社会貢献活動ではない
■メセナ活動が価値創造の「土壌」を育んできた
■本業以外での社会との接点が革新につながる