CDPやTCFDなどが重視する「気候移行計画」とは

記事のポイント


  1. CDPなど国際イニシアティブは「気候移行計画」を重視する
  2. 気候移行計画とは1.5℃目標と整合した包括的な脱炭素戦略を指す
  3. 単なる削減計画にとどまらず、事業戦略と関連付けて策定することが必要だ

オルタナは6月18日、サステナ経営塾21期第3回を開いた。第2講には、オルタナ総研の池原庸介・フェローが登壇し、「脱炭素社会に向けた国内外の動向と企業関連の国際イニシアティブ」と題して講義した。主要各国の排出削減状況から、脱炭素関連の国際イニシアティブの最新動向を解説し、企業には実効性を持った「気候移行計画」の策定を求めた。講義レポートの全文は下記の通り。(オルタナ輪番編集長=池田真隆)

サステナ経営塾で企業のサステナ担当者向けに講義を行う、オルタナ総研の池原フェロー=6月18日、都内で

世界の平均気温は右肩上がりで急激な上昇を続ける

近年、地球温暖化の原因については、「人為起源であることが科学的に立証されている」とする見解が国際的に共有されています。自然の気候変動によっても一時的に気温が変化することはありますが、現在のような長期的かつ急激な温暖化は、人間活動、特に化石燃料の燃焼による温室効果ガスの排出が主因です。

たとえば1991年、フィリピンのピナトゥボ火山が大噴火し、大量の火山灰が成層圏まで達しました。これにより太陽光が遮られ、地球の平均気温が一時的に低下しました。日本では冷夏となり、米の収穫が激減。タイ米の緊急輸入を余儀なくされ、「平成の米騒動」と呼ばれました。これは自然由来の気候変動の一例です。

一方、1998年にはエルニーニョ現象によって世界の平均気温が一時的に急上昇しました。こうした自然の「ゆらぎ」とは異なり、長期的な温暖化トレンドはCO2やメタンなどの温室効果ガスの累積的な排出によって説明できます。

現行の目標では1.5℃はおろか、2℃の達成も難しい

パリ協定における「気温上昇を1.5℃以内に抑える」目標を達成するには、2025年までに排出量をピークアウトさせ、2030年までに2019年比で43%、2035年には60%削減する必要があります。具体的には、2030年までに世界のCO2排出量を48%削減し、事実上の「半減」を実現しなければなりません。

日本は国連に提出したNDC(国が決定する貢献)で、2030年までに46%削減(2013年比)を約束しています。米国やEUもそれぞれ目標を設定し、NDCを更新しています。

米国は、2030年までに2005年比で50 ~ 52 %削減、2035年までに2005年比で61~66%削減を目指します。EUは2030年までに、1990年比で55%削減が目標です。英国は2030年までに1990年比で68%削減、2035年までに1990年比で81%削減です。

しかし、現時点で各国が提出しているNDCがすべて実現したとしても、気温上昇は2.6〜2.8℃にとどまると予測されています。つまり、現行の目標だけでは1.5℃はおろか、2℃の達成も難しいのが現状です。

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M.Ikeda

池田 真隆 (オルタナ輪番編集長)

株式会社オルタナ取締役、オルタナ輪番編集長 1989年東京都生まれ。立教大学文学部卒業。 環境省「中小企業の環境経営のあり方検討会」委員、農林水産省「2027年国際園芸博覧会政府出展検討会」委員、「エコアクション21」オブザイヤー審査員、社会福祉HERO’S TOKYO 最終審査員、Jリーグ「シャレン!」審査委員など。

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