「志」を求める若者たち(18) 農作業でニートの自立を支援――フェアトレード東北

ニートなどの自立支援を続けてきた事業型NPOが東日本大震災で被災。しかし避難所の市民を支援するため、今もニートたちと活動を続ける。新聞・テレビが伝えない被災地にあるNPOの活動とは。(聞き手 今一生)=文中敬称略

布施龍一(35歳) 宮城県石巻市でニートらの自立を支援するNPO法人フェアトード東北の代表理事。2010年度の人間力大賞・人間力開発協会奨励賞を受賞。

(本誌からの続き)

2009年度に初めて生産した『ニート米』のパッケージ

――フェアトレード東北といえば「ニート米」という具合に、2009年はガジェット通信の記事にもなり、インターネット上で評判になりましたね。

布施 昨年も元朝日新聞論説委員の高成田享さんが記事にしていただき、おかげさまで完売できました。

――震災後は、布施さん自身は被災者支援活動に忙殺されているので大変ですが、スタッフのマネジメントは大丈夫なんでしょうか?

布施 サブリーダー的なスタッフもいます。彼らは自分の店が流されてしまったので、たぶんうちの団体の専従スタッフとして働くことになるかもしれません。

――震災1ヶ月後の被災地の様子は、全国向けの新聞やテレビの報道とはまったく違って、信号機は使えないし、がれきの山だし、復興どころか、復旧も完全とは言えません。そんな状況で自らも被災しているのに孤立した避難所を探し、支援ニーズを聞く活動を始めたのはなぜでしょう?

布施 ガソリンを買うお金がなかったり、車も流されて自由に使えなかったり、余震で道路が崩れたりしてますから、支援物資が十分に届いていない場所がまだあるんですね。

震災1ヶ月後でも「グランドゼロ」状態のままで放置されている石巻市の沿岸部(門脇小学校付近)

震災後6週間になる現在でも支援物資のニーズはころころ変わるし、孤立した集落では、震災の被害による生活上の不安から自殺者も出たと聞きました。なのに、マスメディアは震災を風化させようとしている。まったく腹が立ちます。

僕らの活動を支援してくれている人や団体も徐々に増えてきました。中でも、ラッシュジャパンさんの支援はすごかった。

ハンパないくらい支援物資をすぐ送ってくれましたよ。ボランティア休暇を作って、希望者には「行くならフェアトレード東北へ行きなさい」とアナウンスしてくれたうえに、社員の中でも情報を共有してくれるので、説明する時間がない僕らにとってはありがたかったです。感動しましたね。

――ゴールデンウィーク前の現在(取材当時)、そろそろ米を作り始める頃合いですが…。

千葉大学で4月21日に行われた「被災地報告会」で石巻市の惨状を説明する布施氏

布施 今年はニートたちが何人田植えに来れるかわからないんです。家を失った人が多いので毎回来れるかどうか…。放射能のある福島を通って石巻に戻るのを親が嫌がるために戻ってこれない人も。

ニートだけ10人くらいで再開することになりそうです。彼らを農地に運んでくれた地元のヤンキーたちも、車も、みんな流れてしまったので、新たなボランティアを集めたいです。うちの団体では常時、ボランティアの方を募集しています。

着替えと日用品だけ持って来ていただければOKです。ボランティア保険はご自身でお願いします。

配給の手伝い、おばあちゃんの話し相手、夕食準備などなので、女性の方をメインで募集いたします。1日2食、寝床完備。よろしくお願いいたします。

★NPO法人 フェアトレード東北の公式サイト
★NPO法人 フェアトレード東北の公式ブログ

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オルタナ編集部

サステナブル・ビジネス・マガジン「オルタナ」は2007年創刊。重点取材分野は、環境/CSR/サステナビリティ自然エネルギー/第一次産業/ソーシャルイノベーション/エシカル消費などです。サステナ経営検定やサステナビリティ部員塾も主宰しています。

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