CSVからCSR へ: ビジネスのネガティブな社会的影響を忘れるな(CSRmonthlyから転載)

ISO26000 では「慈善活動は社会にプラスの影響を与えることができる。しかし、組織はこれを社会的責任のその組織への統合に代わるものとして利用すべきでない」としていて、慈善的寄付は、そもそも社会的責任の外にあるものという定義をしている。

欧州委員会のCSR の定義は「 企業の社会に与える影響(インパクト)に対する責任」とされ、①企業の所有者/株主、ステークホルダーと社会の共有価値(シェアード・バリュー)の創造を最大化する。②起こりうる不都合な影響を同定、回避、緩和するーーという2側面が求められている。

ISO26000 では、ネガティブな側面への対応が中心だが、やはり、両側面が言及されている。少なくとも2010 年以降のCSR は、企業行動に伴う社会に対するネガティブな側面への対応とポジティブな価値の増大の2側面を含んでいると理解するのが正確である。すなわち、CSV はCSR の一部だという事である。

従って、「CSR からCSV」という言い方を用いると、「CSR=慈善寄付と思っている」と見られるだけでなく、「CSR の重要側面であるビジネスのネガティブな社会的影響への対応をしないという宣言」と解釈される可能性すらあるのだ。

もちろん、CSV を積極的に導入しようとする企業は、そのように解釈されるのを望んでいる訳ではないと思うので、多様なステークホルダーの視線を気にするならば、表現には注意が必要である。

企業不祥事の歴史は繰り返される

しかし、残念ながら、本当に企業のネガティブな影響の側面を忘れているかのような事例が相次いでいる。虚偽表示、反社会的勢力との関係、消費者や利用者の安全軽視など、連日のように企業の経営陣が謝罪を行っている。

2000 年前後には同様の企業不祥事が多発し、その結果、2003 年の日本のCSR 元年に発展。約10 年の時を経て、また同様な事が繰り返されているのはなぜだろうか。

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オルタナ編集部

サステナブル・ビジネス・マガジン「オルタナ」は2007年創刊。重点取材分野は、環境/CSR/サステナビリティ自然エネルギー/第一次産業/ソーシャルイノベーション/エシカル消費などです。サステナ経営検定やサステナビリティ部員塾も主宰しています。

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