経営層の11%が事業成長とSX推進を両立、そのカギは

記事のポイント


  1. 富士通は経営層の11%が事業成長とSXの両立を実感していると公表した
  2. この層は、長期的な視点を持ちデータの利活用が進んでいることが特徴となる
  3. SXを加速するには、目標の明確化やSX戦略の策定など4ステップがある

富士通はこのほど、「富士通SX調査レポート2024」を公表した。世界15カ国の企業の経営者層に調査を行い、そのうち11%が事業成長とSXを両立していることがわかった。この層は、「長期的な視点を持ってデータの利活用が進んでいる」ことが特徴になっている。調査では、SXの加速に向けて達成目標の明確化やSX戦略の策定など4つのステップがあるとした。(オルタナ編集部・萩原 哲郎)

富士通は2023年11月~12月にかけて、日本を含む15カ国の年間売上高5億ドル(約777億円)以上の企業・組織の経営者層600人を対象にアンケートを行い、「富士通SX調査レポート2024」としてまとめた。

SX推進に積極的な企業は増えている。「サステナビリティは今後5年間の最優先事項だ」と答えたのは70%に上り、前回調査(2023年1月)に比べて13ポイント増えた。その一方で、サステナビリティ戦略を立てて、「具体的な成果を実感できている」としたのは、26%にとどまった。

こうした差は、SXの個別の取り組みにおいても見られた。調査では「地球環境問題」「デジタル社会」「人々のウェルビーイング」に区分して、合計14の取り組みについて、「具体的な成果が出たか」を聞いた。いずれの取り組みでも、「具体的な成果が出た」と答えたのは、わずか10~20%に過ぎなかった。

チェンジメーカーがSXに取り組む理由は、ブランドの向上

一方で「SXと事業成長を両立できている」とした経営者も11%いた。同調査では、この11%の層を「チェンジメーカー」と位置付け、その取り組みにSX推進のヒントがあるとした。

同調査はチェンジメーカーの特徴として、「長期的な視点」と「データの利活用に積極的であること」を挙げた。

チェンジメーカーがSXを推進する動機は、「ブランドイメージ・評価向上」(63%)、「社会に良い影響を与える」(60%)、「地球環境の影響を低減」(54%)だった。

一方、それ以外の経営者は「投資の呼び込み」(51%)、「事業成長と拡大」(50%)、「新規事業・サービス開発」(49%)だった。

チェンジメーカーがSXに取り組む主な要因は、ブランドイメージの向上
チェンジメーカーがSXに取り組む主な要因は、ブランドイメージの向上

チェンジメーカーは、長期的な視野を持って、地球環境・社会にとって正の影響を及ぼすことで、ブランド評価などの副産物が得られると考えている傾向が出た。一方で、それ以外の経営者は財務的利益の追求を重視する傾向にあることが分かった。

チェンジメーカーは、組織の枠組みを超えたデータ活用にも積極的だ。社内では最高レベルでのデータ活用をしているケースが44%(それ以外は12%)となった。外部組織との連携度合いについても、チェンジメーカーの69%は成熟度が高い傾向にあった。

■「データ利活用」などSX推進と事業成長の両立を図る4ステップ

こういったチェンジメーカーの特徴を分析したうえで、調査では「チェンジメーカーになるための4つの重要なステップ」を挙げる。

①組織のパーパスを策定し、達成目標を明確にする
②SX戦略を策定し、目標の達成に向けて行動を推進する
③データ利活用の成熟度を上げる(内部連携)
④組織の枠組みを超えてデータ利活用のコラボレーションをする(外部連携)

富士通コンテンツマーケティング部の駒村伸シニアマネージャーは「他社のデータも含めたあらゆる情報を集約して可視化することがデータ活用の第一歩だ」としたうえで、同社として「サービスや技術の提供、コンサルティングを通じて、顧客のビジネスとSXの両立を支援する」と話した。

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萩原 哲郎(オルタナ編集部)

2014年から不動産業界専門新聞の記者職に従事。2022年オルタナ編集部に。

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キーワード: #脱炭素

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