記事のポイント
- 世界の富裕層上位1%が排出するCO2はグローバルサウス50億人分に相当する
- 国際NGOは大量のCO2排出が生産高を減少させ、飢餓や貧困につながったと指摘
- この国際NGOは豪華ヨットや自家用ジェット機などの使用制限を求めた
国際NGOオックスファムは10月28日、「炭素の不平等」に関する最新報告書を公表した。同NGOは昨年、世界の上位1%の富裕層によるCO2排出量は、グローバルサウスの貧しい国々に住む50億人の排出量に匹敵すると指摘した。今年の報告書では、超富裕層による消費と大量のCO2排出が世界の生産高を減少させ飢餓や貧困につながっているとし、プライベートジェット機や豪華ヨットの使用制限などを求めた。(オルタナ副編集長=北村佳代子)
貧困の撲滅を掲げる国際NGOのオックスファムは、世界の億万長者上位50人の消費や移動、投資内容を分析した。
「炭素の不平等が殺す」と題した最新報告書は、世界の富裕層による消費がパリ協定の1.5℃未満の目標達成をますます困難にしているだけでなく、飢餓や貧困、過剰死亡にもつながっていると指摘する。
報告書によると、過去30年間の上位1%の富裕層の消費とCO2排出による影響で、世界の生産高は2兆9000億ドル(約444兆円)の減少につながった。この規模の作物の減少は、年間1450万人分が必要とするカロリー量に相当するという。
■富豪の「移動」による桁外れの排出量も明らかに
報告書は、世界の富豪によるプライベートジェット機や豪華ヨットの利用状況についても言及する。
米富豪のイーロン・マスク氏は、所有する少なくとも2機の自家用ジェット機から年間5497トンのCO2を排出しており、これは、世界の1人当たり平均排出量の834年分に相当する。
米アマゾンのジェフ・ベゾスCEO(最高経営責任者)は、所有する2機のプライベートジェット機で1年間で25日間飛行し、そこで排出した2908トンのCO2の量は、同社の平均的な社員1人が排出する量の207年分だという。
2人に限らず、世界の富豪らは年平均で184回プライベートジェット機を利用し、機内で過ごす時間は平均425時間、その排出量は平均的な人が300年間で排出する量に相当するという。これは豪華ヨットも同様で、超富裕層によるヨットでのCO2排出量は、平均的な人の排出量の860年分に上ると分析した。
もし地球上の全人類がこうした超富裕層並みの割合で排出すれば、パリ協定で掲げる1.5度目標のカーボン・バジェット(炭素予算)は2日足らずで底を突く、と指摘する。
■「炭素の不平等」解消に向けた対策を呼びかけ
富裕層の投資ポートフォリオについても、分析の結果、保有株式の約4割が、石油、鉱業、海運、セメントなどの多排出産業に集中していることが明らかになった。
オックスファムのキアラ・リグオリ上級気候正義政策アドバイザーは、「富裕層らの贅沢なライフスタイルや汚染産業への投資による膨大な排出量は、不平等や飢餓を加速し、人命を脅かしている」とコメントした。
その上で、プライベートジェット機や豪華ヨットの使用制限を手始めに、炭素税の導入や、超富裕層への課税強化など、「炭素の不平等」解消に向けた対応の必要性を強調した。