記事のポイント
- 米ドジャースに、化石燃料企業がスポンサーとして資金を提供する
- 市民らは「スポーツウォッシュ」だとして契約解消を呼びかける
- 化石燃料企業によるスポーツウォッシュは約8400億円に上るとの指摘もある
米ドジャースに、化石燃料企業が長年スポンサーとして資金を提供してきた。これを「スポーツウォッシュ」だとして、市民らは球団に対し、化石燃料企業とのスポンサー契約の解消を求めている。ドジャースに限らず、幅広いスポーツに、多数の化石燃料企業がスポンサー提供を行っている。英シンクタンクは、化石燃料企業のスポーツウォッシュは56億ドル(約8400億円)に上ると指摘する。(オルタナ副編集長=北村佳代子)

(写真提供:UCLAエメット気候変動・環境研究所)
米ドジャースの本拠地ドジャースタジアム(カリフォルニア州ロサンゼルス市)で、ひときわ目立つのが、鮮やかなオレンジ色の円の中に青文字で「76」と書かれたロゴマークだ。同スタジアムがオープンして以来、このロゴはスタジアム内に2つあるスコアボードの最上段の真ん中を定位置としてきた。
これは米国内で広く見られるガソリンスタンドチェーンのロゴだ。かつて「ユニオン76」として知られたこのチェーンブランドは、企業買収などを経て、今は米テキサス州に本社のある石油精製・販売企業フィリップス66の傘下にある。
フィリップス66は、「76」のほか「フィリップス66」「コノコ」といったガソリンスタンドをチェーン展開する、ドジャースのスポンサー企業だ。
だが、こうした化石燃料企業の広告に対する社会の目は厳しくなっている。
■化石燃料企業の広告禁止を求める声が高まる
気候危機の中、アントニオ・グテーレス国連事務総長は2024年6月、各国に対し、グリーンウォッシュを防ぎ、化石燃料企業の広告を禁止するよう呼びかけた。
2024年8月にはロサンゼルス市民らが、署名活動を通じて、球団オーナーのマーク・ウォルター氏に対し、化石燃料企業であるフィリップス66とのスポンサー契約を終了するよう求めた。
そこには、エミー賞受賞俳優や環境活動家、科学者、メディア関係者などの著名人も名を連ねた。署名運動は8月6日に開始して以来、10月15日時点で22000件超の署名を集めている。
署名のオープンレターは、化石燃料企業によるスポンサーシップを「化石燃料が健康に有害であることを忘れさせようとする企て」だと断じる。
署名活動を率いるザン・デュビン氏は、ドジャースがフィリップス66とのスポンサー契約を解消するまで、署名を集め続ける予定だという。デビュン氏は今年初め、ディズニーに対する署名活動も展開し、ディズニーパーク内のレーシングカートタイプのアトラクション「オートピア」の電動化をディズニーが約束している。
■現地メディアも「スポーツウォッシュ」を指摘
地元ロサンゼルス・タイムス紙も、ドジャースと化石燃料スポンサーの関係を問題視する記事を連載する。
同紙の気候ジャーナリスト、サミー・ロス氏は、スポーツウォッシュ(グリーンウォッシュのスポーツ版)に対する忸怩たる思いを以下のようにニュースレターで漏らした。
「自分はドジャースの熱狂的ファンだ。自分の好きな選手たちが、地球を破壊するプロパガンダを売り込むために利用されているのを見るのは耐えられない」
「スポーツウォッシュは、タバコ業界がすでに実証済みのPR戦術だ。未来の暗い業界が、人々に愛されるスポーツチームやブランドと提携し、人々から好意的に受け止めてもらうことで公共の政策に影響を与えようとしている」(同)
なお、ロス氏はドジャースに、化石燃料企業からのスポンサーシップについて何度かコメントを求めたが、返答はないという。
■スポンサー企業はカリフォルニア州から提訴されている
■スポーツウォッシュは約8400億円の産業