記事のポイント
- 米フェデックスは持続可能な航空燃料(SAF)の調達で業界をリードへ
- 同社は2040年までにカーボンニュートラル化を目指す
- 航空業界ではSAFなどの利用で排出削減を狙うが、普及促進に課題が
米物流大手のフェデックスは持続可能な航空燃料(SAF)の調達で業界をリードする。同社はカーボンニュートラルの目標年を2040年に設定するなど、野心的な目標を掲げる。コスト面などで普及促進に課題が多いSAFの調達を先行し、業界全体の脱炭素化を後押しする。(オルタナ輪番編集長=池田真隆)

フェデックスはこのほど、SAFの製造大手ネステ(フィンランド)との契約を発表した。ロサンゼルス国際空港(LAX)での納入分として、300万ガロン(約1.1万キロリットル)以上の「ニートSAF」を調達したことを明らかにした。
今回調達した300万ガロンという規模は、フェデックスがLAXで年間に使用するジェット燃料の約5分の1に当たる。米国の貨物航空会社によるLAXでのSAF購入量としては過去最大だ。
SAFは、従来の化石燃料由来のジェット燃料に代わる、持続可能な代替燃料だ。今回、フェデックスがネステから購入したニートSAFは「混合SAF」や「ドロップイン燃料」と呼ばれるもので、既存の航空機エンジンや給油インフラの装置を変えずに使うことができる。
■ニートSAFは従来比GHG排出量8割減に
ニートSAFは、使用済み食用油や動物性油脂廃棄物など、100%再生可能な廃棄物や残渣原料から製造する。従来のジェット燃料と比べると、燃料のライフサイクル全体における温室効果ガス排出量を最大80%削減する。
フェデックスのカレン・ブランクス・エリス・チーフ サステナビリティ オフィサー兼環境対策担当副社長は、「SAFの調達は、当社の航空分野における排出削減戦略の重要な要素だ。2040年までにカーボンニュートラルな輸送業務を実現するという我々の目標に向けて取り組む中で、SAF市場が成長し続けることが必要だ」と話した。
国際航空分野では、航空業界の国際機関であるICAO(国際民間航空機関)が、業界全体で2050年までにカーボンニュートラルを目指す目標を採択した。この目標の達成のために、SAFの利用は、最もCO₂の削減効果が高いとされている。
ICAOでは、「2030年までにSAFなどの利用により、5%の炭素削減を目指す」という中間目標を設定した。だが、2022年時点の世界のSAF供給量は、約30万キロリットルで、世界のジェット燃料供給量の0.1%程度だ。製造コストなどに課題があり、普及が進んでいない。